人造妖精と行き止まりの夢/メインストーリー

 貴族の責務として、一応夜会に出ては見たけれど。

「ああほら、あの方」
「確か、婚約者に振られちゃったんだったかしら」
「相手が王女じゃ分が悪いな」
「婚約者の爵位が下だからと侮った結果じゃない?」

 噂、噂、噂。
 根も葉もない、と言い切れない自分が情けない。

 ロベルトが私を選んではくれなかったことも、女として何一つ王女に敵わないことも、心のどこかで子爵夫人の肩書きに不満を感じていたであろうことも、全部事実だった。

 クスクスと嘲笑する声。
 理解者ぶって同情する上から目線。
 噂の女と遊んでやろうという下心。

 彼らを見て思う。

 ロベルトは、なんて情のある人だっただろう。

 心を抉るような嘲笑も、
見下すような同情も、
漬け込むような遊びも、
決してしない人だった。

 はにかむように笑い、
相手に目線を合わせて話し、
二人の時間は全て特別な記念日のように扱う。
 そんな人だった。

 不器用で、気が弱いところもあったけれど。

 今、この場に彼がいたならば。

 嫌な噂が聞こえないように、
不快な目線が見えないように、
不躾な男の手が触れないように。

 そっと手を引いて、会場の外へ連れ出してくれただろう。

 そんな彼を、あの日の私は信じなかった。
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