人造妖精と行き止まりの夢/メインストーリー
抱き上げた女は、想像以上に軽かった。
ひよこ色のワンピースには黒ずんだ血の跡があり、
スカートの裾からは腫れ上がった足が覗いている。
まだ若そうだったが、傷は顔にまで及んでおり、
人相はよく分からない。
血で汚れた前髪を退けると、
額に“異端者”と読める切り傷があった。
「何もここまで……」
言いようのない嫌悪感が背筋を伝う。
要は、彼女は魔女狩りに合い、
ここまで逃げてきたという事だ。
魔女狩りは王都を含むほとんどの地域で、
すでに禁止されている。
彼女はかなりの辺境か、領主の管理が行き届かない地域、
あるいは国外からやって来たのだろうと推察された。
彼女をベッドに横たえてはみたが、
道具も女手も無く、
やらないよりマシという程度の処置しかできない。
それでも、目覚めた彼女は何度も僕に礼を言った。
髪の色が珍しいというだけで、
これほどの暴行を受けたにも関わらず、
彼女は実に穏やかな性格で、
僕の境遇に涙を流すほど優しい人だった。
逃亡中の彼女には行く当てが無く、
貴族だった僕には、身の回りの世話をしてくれる人が
必要だった。
ごく自然な流れで彼女は屋敷に留まり、
僕のメイドとなった。
見返りとして僕は彼女を匿い、
読み書きを教える。
誰かと過ごす、なんでもない日常。
とても久しぶりなこの感覚が、
愛おしくてたまらなかった。
ひよこ色のワンピースには黒ずんだ血の跡があり、
スカートの裾からは腫れ上がった足が覗いている。
まだ若そうだったが、傷は顔にまで及んでおり、
人相はよく分からない。
血で汚れた前髪を退けると、
額に“異端者”と読める切り傷があった。
「何もここまで……」
言いようのない嫌悪感が背筋を伝う。
要は、彼女は魔女狩りに合い、
ここまで逃げてきたという事だ。
魔女狩りは王都を含むほとんどの地域で、
すでに禁止されている。
彼女はかなりの辺境か、領主の管理が行き届かない地域、
あるいは国外からやって来たのだろうと推察された。
彼女をベッドに横たえてはみたが、
道具も女手も無く、
やらないよりマシという程度の処置しかできない。
それでも、目覚めた彼女は何度も僕に礼を言った。
髪の色が珍しいというだけで、
これほどの暴行を受けたにも関わらず、
彼女は実に穏やかな性格で、
僕の境遇に涙を流すほど優しい人だった。
逃亡中の彼女には行く当てが無く、
貴族だった僕には、身の回りの世話をしてくれる人が
必要だった。
ごく自然な流れで彼女は屋敷に留まり、
僕のメイドとなった。
見返りとして僕は彼女を匿い、
読み書きを教える。
誰かと過ごす、なんでもない日常。
とても久しぶりなこの感覚が、
愛おしくてたまらなかった。