笑顔をクリエイト
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その人を初めて見たとき、私は目を奪われた。
彫りの深い凛々しい顔立ちに、厚い胸板。
物静かで、けれど優しそうな眼差し。
こんなに格好良い人を、生まれて初めて見た。
それが私の桐生さんに対しての第一印象だった。
「美琴、仕事は順調か」
真島建設のプレハブ小屋に、今日も桐生さんがやってきていた。
彼は私を見つけると挨拶だけではなく、必ずこうして気遣いの言葉をくれる。
「はい、お気遣いありがとうございます」
たぶん今、真っ赤になっている。
自分でそう自覚するほど顔が熱かった。
「兄さんは滅茶苦茶な人だからな。
苦労をかけるが、兄さんをよろしく頼む」
「もちろんでございます」
ございますって何だよ、と自分でも思うのに緊張して上手く話せない。
桐生さんの低い声は卑怯だ。
あの声で名前を呼ばれたら、女はみんなイチコロだよ。
「ん、どうした。顔が赤いぞ」
「熱でもあるのか」と顔を覗き込まれ、私の心臓は一瞬止まった。
言葉にならず慌てふためく私を見て、桐生さんがフッと笑う。
「...からかってますね」
「どうだかな」
わざとやってる、絶対に。
桐生さんは鈍感そうに見えて、その辺は意外と上手いらしい。
してやられた感があってちょっと悔しかった。
「桐生さんは顔と声がずるいですよね」
「まるで性格が悪いみたいな言い方だな」
「...さっきのは性格悪いですよ」
私が不貞腐れると桐生さんが「すまない」と言ってまた笑った。
それに釣られてこっちまで笑顔になってしまう。
いつもの緊張はどこへやら、私はやっと桐生さんとまともに話せるようになった。
別にこの人に恋をしている訳じゃない。
でもあまりにも完璧過ぎて見惚れてしまう。
私にとっての桐生さんは、まさにアイドルとか俳優と一緒だった。
「随分と仲良さそうやのぉ」
私たちが和気藹々と話しているプレハブに、真島さんが入ってきた。
顔には明らかに不機嫌と書いてあって、私はちょっと戸惑う。
「美琴チャンとそない仲良うして、こないだの刑事のネェちゃんにチクッたるで!」
「美琴とは普通に話していただけだ。
それに狭山とはそういう仲ではない」
桐生さん、刑事の彼女がいるんだな、と他人事のように聞いていたら、真島さんが「美琴?!」と私の名前を大声で叫んだ。
「美琴やとぉぉおお!わしかてまだチャン付けでしか呼んどらんのに、桐生チャンが何で呼び捨てにすんのや!」
「別に何と呼んだっていいだろう。
兄さんだって呼び捨てにしたければ、そうすればいい」
「何をこの!アホ抜かせ!呼び捨てにしたいなんて言っとらんやろが!」
「じゃあ何をそんなに怒ってるんだ」
「じゃかましいわ!ボケ!」
二人が意味不明の言い合いを始めてしまったので、私は仕方なくパソコンをいじる。
このやり取りはたぶん長い。
私は作りかけの資料に目を落とし、見てみない振りを始めた。
けれど「美琴はどうなんだ」と桐生さんに声を掛けられる。
突然の飛び火に瞬きをするしかない。
「ど...どうって...?」
「兄さんに何て呼ばれたいんだ」
この人は急に何を聞くんだろう。
疑問に思うが表情に至っては真剣そのもので、私もつい考えてしまった。
真島さんに何て呼ばれたいか...か。
数秒考えてから私は口を開いた。
「美琴でも美琴チャンでも、真島さんの呼びやすいように呼んでくれたらいいですよ」
「でも」と続ける。
「強いて言うなら、呼び捨ての方が嬉しいです」
私の答えに桐生さんはフンと笑った。
あ、まただ、と思う。この人今日はすごく意地悪だ。
「美琴は兄さんに呼び捨てにされたいそうだ」
「なっ...!」
桐生さんの言葉に、私はさっきよりずっと顔を赤くした。
「二人とも素直じゃねぇな」
桐生さんはニヤリと笑うが、私と真島さんはただ口をパクパクさせるだけ。
この日から真島さんは、私を呼び捨てで呼ぶようになった。
彫りの深い凛々しい顔立ちに、厚い胸板。
物静かで、けれど優しそうな眼差し。
こんなに格好良い人を、生まれて初めて見た。
それが私の桐生さんに対しての第一印象だった。
「美琴、仕事は順調か」
真島建設のプレハブ小屋に、今日も桐生さんがやってきていた。
彼は私を見つけると挨拶だけではなく、必ずこうして気遣いの言葉をくれる。
「はい、お気遣いありがとうございます」
たぶん今、真っ赤になっている。
自分でそう自覚するほど顔が熱かった。
「兄さんは滅茶苦茶な人だからな。
苦労をかけるが、兄さんをよろしく頼む」
「もちろんでございます」
ございますって何だよ、と自分でも思うのに緊張して上手く話せない。
桐生さんの低い声は卑怯だ。
あの声で名前を呼ばれたら、女はみんなイチコロだよ。
「ん、どうした。顔が赤いぞ」
「熱でもあるのか」と顔を覗き込まれ、私の心臓は一瞬止まった。
言葉にならず慌てふためく私を見て、桐生さんがフッと笑う。
「...からかってますね」
「どうだかな」
わざとやってる、絶対に。
桐生さんは鈍感そうに見えて、その辺は意外と上手いらしい。
してやられた感があってちょっと悔しかった。
「桐生さんは顔と声がずるいですよね」
「まるで性格が悪いみたいな言い方だな」
「...さっきのは性格悪いですよ」
私が不貞腐れると桐生さんが「すまない」と言ってまた笑った。
それに釣られてこっちまで笑顔になってしまう。
いつもの緊張はどこへやら、私はやっと桐生さんとまともに話せるようになった。
別にこの人に恋をしている訳じゃない。
でもあまりにも完璧過ぎて見惚れてしまう。
私にとっての桐生さんは、まさにアイドルとか俳優と一緒だった。
「随分と仲良さそうやのぉ」
私たちが和気藹々と話しているプレハブに、真島さんが入ってきた。
顔には明らかに不機嫌と書いてあって、私はちょっと戸惑う。
「美琴チャンとそない仲良うして、こないだの刑事のネェちゃんにチクッたるで!」
「美琴とは普通に話していただけだ。
それに狭山とはそういう仲ではない」
桐生さん、刑事の彼女がいるんだな、と他人事のように聞いていたら、真島さんが「美琴?!」と私の名前を大声で叫んだ。
「美琴やとぉぉおお!わしかてまだチャン付けでしか呼んどらんのに、桐生チャンが何で呼び捨てにすんのや!」
「別に何と呼んだっていいだろう。
兄さんだって呼び捨てにしたければ、そうすればいい」
「何をこの!アホ抜かせ!呼び捨てにしたいなんて言っとらんやろが!」
「じゃあ何をそんなに怒ってるんだ」
「じゃかましいわ!ボケ!」
二人が意味不明の言い合いを始めてしまったので、私は仕方なくパソコンをいじる。
このやり取りはたぶん長い。
私は作りかけの資料に目を落とし、見てみない振りを始めた。
けれど「美琴はどうなんだ」と桐生さんに声を掛けられる。
突然の飛び火に瞬きをするしかない。
「ど...どうって...?」
「兄さんに何て呼ばれたいんだ」
この人は急に何を聞くんだろう。
疑問に思うが表情に至っては真剣そのもので、私もつい考えてしまった。
真島さんに何て呼ばれたいか...か。
数秒考えてから私は口を開いた。
「美琴でも美琴チャンでも、真島さんの呼びやすいように呼んでくれたらいいですよ」
「でも」と続ける。
「強いて言うなら、呼び捨ての方が嬉しいです」
私の答えに桐生さんはフンと笑った。
あ、まただ、と思う。この人今日はすごく意地悪だ。
「美琴は兄さんに呼び捨てにされたいそうだ」
「なっ...!」
桐生さんの言葉に、私はさっきよりずっと顔を赤くした。
「二人とも素直じゃねぇな」
桐生さんはニヤリと笑うが、私と真島さんはただ口をパクパクさせるだけ。
この日から真島さんは、私を呼び捨てで呼ぶようになった。