「美琴チャン、今晩どや」


「今日はダメです」


私はパソコンから顔を上げずそれだけ答えた。
あの食事の後から、私は真島さんを避けている。
避けると言っても同じ会社なのだから、全部は難しかった。
だからせめてと思って、食事の誘いは断っている。


「なんや最近ずっと冷たいなぁ」


「忙しいんです」


「ふうん」と言われるが顔を上げない。
たぶん今真島さんは絶対に不貞腐れた顔をしている。
それからまた何かギャップめいたことをして、私を惑わせてくるに違いない。
手に取るようにそう分かるから、私は絶対に真島さんを見ないんだ。
そう思って画面にかじりついていたら、プレハブ小屋の扉が勢い良く開いて肩が震えた。


「親父！桐生の叔父貴が来てますよ！」


飛び込んできたのは西田さんで、来客を知らせに来たらしい。
キリュウさんとは一体誰だろうか。


「おっしゃ！桐生チャンとやったらええ暇つぶしになるでぇ！」


真島さんは心の底から嬉しそうな顔をする。
一瞬、もしかてものすごい美人な女の人なのだろうか、と思った。
生き生きとする真島さんの表情に、もやっとした感情が芽生える。
いかんいかん、と我に返った時にはプレハブ小屋に来客は足を踏み入れていた。


その人を見て、私はハッとする。
嘘でしょう、そう思った。


こんなに格好いい人を私は今まで見たことがない。