真島さんが復帰してきたのは、それから数日後だった。
かなりの怪我を負ったにも関わらず、驚異的な回復だという。


「美琴」


「なんですか」


「いや…アレやんか…」


「なんですか」


「いや…なんでもないわ……」


私はと言うと、未だに真島さんに対しての怒りが冷めず、お礼すら言っていない。
素直にならなくてはと思うのに、柄本医院で見たあの雑誌を思い出すと余計に苛々した。
そんな私に真島さんは、ずっと気を遣うような態度を取ってくる。
それにも私は腹を立てた。


「あ、親父！皆で親父の快気祝いしようって言ってたんですけど」


気まずい空気が流れる中、何も知らない西田さんが事務所に入ってきた。
張りつめていた空気が少し緩んで、真島さんは助かったと言わんばかりに「そやな！ええな！」とはしゃいでいる。


「美琴ちゃんも来ますよね！」


西田さんに満面の笑みで話を振られ、
私は勤めて明るい笑顔を返した。


「行きますよ。韓来貸し切りで、全部真島さんの奢りなら」


「え、でも、親父の快気祝いなのに…」


「かまへん！かまへんのや！」


納得いかない表情の西田さんを、真島さんが必死に説得する。


「わしがええちゅったらええねん！」


「な？」と言われて西田さんが渋々引き下がる。
私は笑顔を崩さないまま「予約しときますね」とだけ言った。
今日はとことん飲んで食べて暴れてやる。
一番高い肉しか頼まないのだと、私は心に決めた。