目が覚めると、景色が真っ白だった。
ぼうっとする頭で辺りを見渡すように首を動かした。


「美琴ちゃん！」


いつかみたいに、そこには心配顔の西田さんがいて、
目が覚めるまでの出来事が現実だったと思い知らされる。


「…西田…さん…ここは……」


「病院っすよ！あの大橋とかいう最低野郎は、親父が半殺しにして
警察に突き出したんでもう安心して大丈夫っす！」


「真島さんは…？」


西田さんの言葉に、扉を蹴破って来てくれた真島さんの姿が蘇った。
思わず「無事ですか」「どこにいるんですか」と矢継ぎ早に質問する。



「親父は全然ピンピンしてましたよ！
今は桐生の叔父貴の頼まれ事とかで、町の方に行っちゃいましたけど」


「よか…た…」


その言葉に心の底から安堵した。
それから彼が話してくれたことによれば、大橋は捕まり、
過去の事件についても再捜査になるということだった。
財力を持ってしても、今回の事ばかりは解決できないという。
「落ち着いたら警察の調書があります」と言った後、西田さんは医者を呼びに出て行った。
父親が起こしたと思った事件の犯人も、嫌がらせの黒幕も、
その全てが大橋だったと考えると、背筋が凍るように冷たくなる。
私は過去にそんな男のことを愛して、人生まで捧げるつもりでいた。
父親の無念を思うと、同時に堪らなく悲しくもなる。
親不孝な娘でごめんなさいと、天国にいる父に心の中で何度も謝った。


「お父さん…真島さんが…助けに来てくれたよ……」


あの時真島さんが、「美琴！」と名前を呼んでくれた事を覚えている。
一刻も早く会ってお礼を言いたい、いや、ただ顔が見たいと思った。
けれど私が彼に会えるのは、それから10日も経ってからのことになる。