飢えた犬の如く
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花屋からもらった捜査資料によると、美琴の父親が起こしたという
殺人事件には、他に容疑者と呼ばれる人間がいたらしい。
けれど肝心なその名前についてはまるで隠されたように伏せられている。
状況証拠が父親が犯人であることを確証付けているようだが、どうも腑に落ちなかった。
「こないごちゃごちゃした事考えるのは性に合わへん」
そう呟いて煙草に火を付ける。
時刻はもうすぐ夕刻に差し掛かろうとしていた。
久しぶりに事務所にでも顔を出そうと思った。
桐生チャンに頼まれた近江連合に関することも重要に違いないが、
何よりも今は美琴のことが気掛かりだった。
西田によればここ最近、現場には嫌がらせの形跡がないという。
それだけが唯一安心できる材料だったが、まだ安全とは言えない。
そう思いながら、辿り着いた事務所の戸を開ける。
数日ぶりに見る美琴の顔は酷くやつれていて、やはり何かあったのではと思った。
「また顔色悪いなぁ」
俺の問いに美琴は「大丈夫です」と笑ってみせた。
けれどその笑顔はどこか無理をしているようで、少しは頼って欲しくなる。
「またなんかあったんやろ。どや、久しぶりに飯でも行こか」
「あ…いえ、今日は予定が……」
俺の誘いに一瞬顔を明るくさせるが、すぐに気まずそうな表情になった。
ますます面白くなくなって、つい意地悪を言いたくなる。
「なんや、デートか。ええ仲の男でもできたんか」
「そんな…」
俺の言葉に美琴は傷ついた表情を浮かべた。
けれど俺だって彼女の態度に多少は傷ついているのだ。
力になってやりたいのに、こんなに心配しているのに、
当の本人は頼ってくれない。
「ま、ええけどな。美琴に男がおるんやったら、わしの出番はないな」
冗談めかして言ってみるが美琴は何も言い返してこない。
俺は思わず、なんやねんと不貞腐れ、苛立ちを隠さないままプレハブ小屋を後にする。
せっかく久しぶりに顔が見れたというのに、面白くない気持ちで一杯だった。
もう空はすっかり暗くなっていて、終業時間が迫っている。
本当は美琴を送ってやるつもりで顔を出したのだが、予定があるのならば仕方がない。
俺はフラフラと充てもなく神室町を歩いた。
この数日美琴を救う為に、こっちはあちこち調べ回ったというのに、あいつはいつの間に良い仲の男なんて出来たのだろう。
「まさか、西田やないやろな」
あいつだったらぶち殺してやる、そう思いながら歩いていると
胸ポケットにある携帯電話が震えた。
表示には「花屋」とある。
「おい、ちょっと気になることがあるんだが。こっちまで来れるか」
挨拶もなく切り出された話題に眉を顰めると、「丁度目の前におる」と返事して電話を切った。
嫌な予感に支配されながら、俺は目の前に聳え立つ高層ビルを見上げた。
殺人事件には、他に容疑者と呼ばれる人間がいたらしい。
けれど肝心なその名前についてはまるで隠されたように伏せられている。
状況証拠が父親が犯人であることを確証付けているようだが、どうも腑に落ちなかった。
「こないごちゃごちゃした事考えるのは性に合わへん」
そう呟いて煙草に火を付ける。
時刻はもうすぐ夕刻に差し掛かろうとしていた。
久しぶりに事務所にでも顔を出そうと思った。
桐生チャンに頼まれた近江連合に関することも重要に違いないが、
何よりも今は美琴のことが気掛かりだった。
西田によればここ最近、現場には嫌がらせの形跡がないという。
それだけが唯一安心できる材料だったが、まだ安全とは言えない。
そう思いながら、辿り着いた事務所の戸を開ける。
数日ぶりに見る美琴の顔は酷くやつれていて、やはり何かあったのではと思った。
「また顔色悪いなぁ」
俺の問いに美琴は「大丈夫です」と笑ってみせた。
けれどその笑顔はどこか無理をしているようで、少しは頼って欲しくなる。
「またなんかあったんやろ。どや、久しぶりに飯でも行こか」
「あ…いえ、今日は予定が……」
俺の誘いに一瞬顔を明るくさせるが、すぐに気まずそうな表情になった。
ますます面白くなくなって、つい意地悪を言いたくなる。
「なんや、デートか。ええ仲の男でもできたんか」
「そんな…」
俺の言葉に美琴は傷ついた表情を浮かべた。
けれど俺だって彼女の態度に多少は傷ついているのだ。
力になってやりたいのに、こんなに心配しているのに、
当の本人は頼ってくれない。
「ま、ええけどな。美琴に男がおるんやったら、わしの出番はないな」
冗談めかして言ってみるが美琴は何も言い返してこない。
俺は思わず、なんやねんと不貞腐れ、苛立ちを隠さないままプレハブ小屋を後にする。
せっかく久しぶりに顔が見れたというのに、面白くない気持ちで一杯だった。
もう空はすっかり暗くなっていて、終業時間が迫っている。
本当は美琴を送ってやるつもりで顔を出したのだが、予定があるのならば仕方がない。
俺はフラフラと充てもなく神室町を歩いた。
この数日美琴を救う為に、こっちはあちこち調べ回ったというのに、あいつはいつの間に良い仲の男なんて出来たのだろう。
「まさか、西田やないやろな」
あいつだったらぶち殺してやる、そう思いながら歩いていると
胸ポケットにある携帯電話が震えた。
表示には「花屋」とある。
「おい、ちょっと気になることがあるんだが。こっちまで来れるか」
挨拶もなく切り出された話題に眉を顰めると、「丁度目の前におる」と返事して電話を切った。
嫌な予感に支配されながら、俺は目の前に聳え立つ高層ビルを見上げた。