一釘一釘の積み重ね
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薬を買って事務所に戻ると、美琴はすやすやと眠りについていた。
西田によれば一度目を覚ましたと言うから、ただ疲れて眠っているだけだろう。
彼女にとってみればここ数日、ろくに眠れなかったに違いない。
いや、もしかするともう何年も、安心した日々を過ごしていないのかも知れなかった。
「親父、車出しましょうか?」
「いや」
顔を出した西田に右手を上げた。
「もう少し寝かしといたるわ。
起きたらタクシーでも捕まえるさかい、お前らは先に帰り」
「...おつかれさまっす」
ペコリと頭を下げる西田を見送り、俺は美琴の寝顔を眺めた。
きめ細かい白い肌が美しい。
くっきりとした二重の瞼に、長い睫毛が生えている。
化粧気はそんなになくとも、美琴は美人だった。
「なんでお前はこんな目に遭うんやろな。
神様はホンマに不公平やな」
顔にかかる前髪をそっと撫でる。
いつの時代も、神様は公平に人を扱ってくれない。
けれどあいつみたいに、お前も幸せになれる日が来るんやでと、心の中でそう呟いた。
「真島...さん」
「目覚めたんか」
薄らと目を開けた美琴が、「ごめんなさい」と呟いた。
「迷惑ばかりかけてごめんなさい」そう言う彼女の口に、人差し指を当てる。
「なんも謝ることあらへん。
こういう時はありがとうって言うんやで。
さ、帰ろか」
美琴の体を抱え起こせば、まだ熱が下がっていないのか、体が熱かった。
ぐったりともたれかかる彼女を抱きとめ、そのまま抱え上げる。
「あの...重いです」
「羽みたいに軽いわ。ちゃんと飯食うてんのか」
両手に彼女を抱きかかえ、そのまま事務所を後にした。
送り狼にならぬよう気を付けなければ、そんな思いでタクシーを捕まえる。