西田さんたちに盗み聞きされていたと分かって、私は顔から血の気が引いた。
いずれバレてしまうと思っていても、怖かった。
この人たちに拒絶されるのが、何よりも怖いのだ。
私は俯いて下唇を噛み締めた。


「水くさいっすよ！美琴ちゃん！」


西田さんの叫びに、私はハッと顔を上げた。
見ればそこにいる人が全員、今までと同じ顔で私を見ている。
嫌な顔も、白い目もしていない。


「俺ら元々極道っすよ！子供さらったり、人を脅したり、刺したり刺されたり、撃ったり撃たなかったりしてきたんです！ここにいる全員そんな奴ばっかすよ！」


両手の拳を力強く握り、そう力説する西田さんの後ろで皆が頷いていた。


「だいたい美琴ちゃんがやったことじゃないんすから、そんな理由で辞めちゃうなんておかしいっす！俺ら全員、美琴ちゃんの味方っすから！」


「だから言うたやろ」


真島さんの顔を見上げれば、フフンと鼻を鳴らして笑顔を見せられる。


「ここは真島建設や。
来るもの拒まず、去る者追い回すくらいやで。
そんなんで誰も美琴を嫌になったりせぇへん」


自信たっぷりに言われて、全身の力が抜けた。
何か言わなきゃと思うのに、言葉が出ない。
ふにゃふにゃと椅子から崩れ、そのまま床にへたり込んだ。
名前を呼ばれている気がするのに、反応できない。
そのまま目の前が暗くなった。