ミレニアムタワーで会いましょう
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西田さんに言われたままの手順で、私は屋上に駆け上がった。
途中からは階段だったので、足が少しガクガクしている。
立ち入り禁止と書かれた扉を開けると、私の体が風に揺られた。
髪の毛が纏わり付くほどそれが強い。
鉄の床に一歩を踏み出して、真島さんの姿を探す。
彼は手摺りに肘をついて、夜景を眺めているようだった。
「真島さんがおセンチだって聞いたから、来ちゃいました」
風にかき消されないように、少しだけ声のボリュームを上げる。
「どうしておセンチなんですか?」
私の声に真島さんが振り返った。
風に揺られる前髪と、ジャケットから覗く鮮やかな刺青にドキリとした。
「誰に聞いたんや、そんなこと」
いつも通りの明るい声色なのに、どうしてだろう。
西田さんに言われたせいなのか、私の目に映る彼はどこか切なげだった。
「元気ないんですか」
風に揺れる髪の毛を抑えながら、私は真島さんに近付いた。
「どうしたんですか」と顔を覗き込んでみる。
片目しか見えないのに、色素の薄い瞳に吸い込まれそうだった。
「誰かさんが電話に出てくれへんからやろか」
その言葉にちょっと胸がキュンとする。
ずるいなこの人は。本当にずるい。
「誰かさんが私の気持ち無視するからむかついてるんですよ」
「そやかて、どうしたらええか分からん」
いつもみたいにふざけて欲しいのに、真島さんはそうしてくれない。
「その手ぇ掴んだらあかん、そう分かっとるのに離せへん。離そうとしても、どっか遠く行かれんのも嫌や」
「高島礼子になりたいんやったなぁ」と真島さんが少し笑った。
冴島さんめ、と思うけれど口にしない。
「礼子には程遠いやろなぁ。薬師丸ひろ子も厳しいんとちゃうか」
「...むかつく。今いいとこじゃないですか」
私が口を尖らせそう言うと、真島さんはいつもみたいにヒャッヒャッヒャと声を上げて笑った。
「わしはどっちかと言うと志麻派やねん。
絵梨、わしがしたろか、志麻に」
そう言った真島さんが片手を私に差し伸べる。
「こっから見る神室町の景色は最高や。
わしの腕の中から、この景色絵梨に見せたるわ」
私は少し泣きそうになって、その手を取る。
皮の手袋の感触が分かる頃には、真島さんの腕の中にすっぽり体が収められていた。
「礼子にも志麻にもならんでええ。
かたせ梨乃も薬師丸もええわ。絵梨のまんまでいたらええ」
耳元で囁かれる言葉はとろける程甘くはなくて。
それでも素直ではないこの人の精一杯を受け止める。
「たぶん子鹿からなんかに化けるんやろな、絵梨は。
そんだけ気強かったら、ええ極妻になるんとちゃうか」
「...プロポーズですか、それ」
真島さんは私の問いに答えてくれない。
けれどその代わりに唇を奪われる。
それはまた強引で、目を瞑る暇もくれないキス。
もうちょっとロマンチックなのが欲しいのに。
ほんと、むかつく。
真島さんの背中に腕を回して、「やり直し」と私は囁く。
その言葉に「ヒャッヒャッヒャ」と彼は笑った。
ミレニアムタワーの屋上から見る神室町は、びっくりするくらい本当に綺麗だった。
途中からは階段だったので、足が少しガクガクしている。
立ち入り禁止と書かれた扉を開けると、私の体が風に揺られた。
髪の毛が纏わり付くほどそれが強い。
鉄の床に一歩を踏み出して、真島さんの姿を探す。
彼は手摺りに肘をついて、夜景を眺めているようだった。
「真島さんがおセンチだって聞いたから、来ちゃいました」
風にかき消されないように、少しだけ声のボリュームを上げる。
「どうしておセンチなんですか?」
私の声に真島さんが振り返った。
風に揺られる前髪と、ジャケットから覗く鮮やかな刺青にドキリとした。
「誰に聞いたんや、そんなこと」
いつも通りの明るい声色なのに、どうしてだろう。
西田さんに言われたせいなのか、私の目に映る彼はどこか切なげだった。
「元気ないんですか」
風に揺れる髪の毛を抑えながら、私は真島さんに近付いた。
「どうしたんですか」と顔を覗き込んでみる。
片目しか見えないのに、色素の薄い瞳に吸い込まれそうだった。
「誰かさんが電話に出てくれへんからやろか」
その言葉にちょっと胸がキュンとする。
ずるいなこの人は。本当にずるい。
「誰かさんが私の気持ち無視するからむかついてるんですよ」
「そやかて、どうしたらええか分からん」
いつもみたいにふざけて欲しいのに、真島さんはそうしてくれない。
「その手ぇ掴んだらあかん、そう分かっとるのに離せへん。離そうとしても、どっか遠く行かれんのも嫌や」
「高島礼子になりたいんやったなぁ」と真島さんが少し笑った。
冴島さんめ、と思うけれど口にしない。
「礼子には程遠いやろなぁ。薬師丸ひろ子も厳しいんとちゃうか」
「...むかつく。今いいとこじゃないですか」
私が口を尖らせそう言うと、真島さんはいつもみたいにヒャッヒャッヒャと声を上げて笑った。
「わしはどっちかと言うと志麻派やねん。
絵梨、わしがしたろか、志麻に」
そう言った真島さんが片手を私に差し伸べる。
「こっから見る神室町の景色は最高や。
わしの腕の中から、この景色絵梨に見せたるわ」
私は少し泣きそうになって、その手を取る。
皮の手袋の感触が分かる頃には、真島さんの腕の中にすっぽり体が収められていた。
「礼子にも志麻にもならんでええ。
かたせ梨乃も薬師丸もええわ。絵梨のまんまでいたらええ」
耳元で囁かれる言葉はとろける程甘くはなくて。
それでも素直ではないこの人の精一杯を受け止める。
「たぶん子鹿からなんかに化けるんやろな、絵梨は。
そんだけ気強かったら、ええ極妻になるんとちゃうか」
「...プロポーズですか、それ」
真島さんは私の問いに答えてくれない。
けれどその代わりに唇を奪われる。
それはまた強引で、目を瞑る暇もくれないキス。
もうちょっとロマンチックなのが欲しいのに。
ほんと、むかつく。
真島さんの背中に腕を回して、「やり直し」と私は囁く。
その言葉に「ヒャッヒャッヒャ」と彼は笑った。
ミレニアムタワーの屋上から見る神室町は、びっくりするくらい本当に綺麗だった。