ミレニアムタワーで会いましょう
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三人の不思議な会食の後、私は真島さんにタクシーに押し込まれた。
ちょっと名残惜しく感じてしまって、事務所での続きをどこかで期待している自分がいるんだと恥ずかしくなった。
いつも唐突で、目を瞑る隙もくれないキス。
行動の割にそれはすごく優しい感触で、触れられた所から溶けていきそうなくらい熱くなる。
あの人のことが好きなんだと痛いほど自覚してしまう。
あれから一週間。
真島さんからの電話はまだ鳴らない。
「絵梨、久しぶりに飲みにいかない?」
デスクで携帯画面と睨めっこしていたところに、同期の青田がやってきた。
「そっちもひと段落付いたんだろ?久々に同期でさ、パーッと」
片手でジョッキを傾ける仕草をしてくる。
ただ電話を待っているのも釈だし、悪くない提案かも知れなかった。
「んー...焼肉以外なら」
「焼肉嫌いだっけ?」
真島さんと食べる以外の焼肉はあんまり魅力がない。
きっとハンバーガーもそう。
違うお店に一緒に行ってしまったら、どこもそうなるんだろうなと思った。
定時を少し過ぎた頃、私と青田ともう二人でオフィスを出た。
行き先は神室町にある安居酒屋だ。
四人でビールを傾け、仕事の愚痴を言い合う。
これぞTHE・同期。
「なんか絵梨、雰囲気変わった?」
「そう?」
唐突に同期の香織に言われ首を傾げる。
「なんか色っぽくなった気がする。もしかして彼氏でもできた?」
香織の言葉に残りの二人が身を乗り出してくる。
あぁ、やだ。こういうの苦手。
「...できてません」
一瞬真島さんの顔が浮かぶが、あれは彼氏と呼べる関係ではない。
時々ご飯を食べるだけ。キスはするけど。
「今の間なに?やだ、なんか訳あり?」
「違いますー!もう、うるさい!」
私は追求を逃れるためにビールを飲み干し、三人にも飲むよう強制する。
そんなことを繰り返しているうちに、全員良い感じに酒が回った。
「ね、誰かの携帯、鳴ってなぁい?」
香織の言葉を合図に皆が鞄やらポケットやらを弄る。
鞄に入れた私の手に振動する物体が触れたので、「はーい、私でした」と手を上げた。
携帯電話を取り出して表示を見る。
そこに表示された名前に少し酔いが覚めた。
「あ、もしもし」
「おう、絵梨ちゃん。何しとんの?」
「今は、えと、飲み会で」
電話の主は真島さんで、私はキョロキョロと周りを見渡した。
目が合った同期三人はニヤニヤしていて、香織は「オトコ?」と親指を突き立ててくる。
「なんや、忙しいんか」
「全然忙しくないです」
私がそう言った瞬間、隣にいた青田が肩を組んできた。
「忙しくないってなんだよー。
ねぇ、絵梨。俺って男がいながら誰と電話してんのぉ?」
完全に悪酔い。
青田の声は電話の向こうに届いたはずだ。
私は慌てて青田を引き剥がすと、走って居酒屋の外に出た。
「あの、同期が、すごく酔っ払ってて」
言い訳しなければならない関係でもないのに、必死になっている自分が少し虚しい。
「二人じゃなくて四人で飲んでるんです」
「別にわしは何人でもかまへんけど。
忙しいみたいやから今度にするわ」
「待ってください!」
電話を切られそうな雰囲気を感じてとっさに引き留める。
「あの、全然忙しくないですから、本当に」
「ふうん。ほなミレニアムタワーまで来れるか?」
「え」
「忙しくないんやったら、そっち抜けだしてわしんとこまで来れるやろ」
それはまるで試すみたいな言い方だった。
この人の意地悪な性分をわかって、私はもう「はい」と言う他ない。
切られた電話を握り締め、店内に戻る。
同期への言い訳を必死に考えた。
ちょっと名残惜しく感じてしまって、事務所での続きをどこかで期待している自分がいるんだと恥ずかしくなった。
いつも唐突で、目を瞑る隙もくれないキス。
行動の割にそれはすごく優しい感触で、触れられた所から溶けていきそうなくらい熱くなる。
あの人のことが好きなんだと痛いほど自覚してしまう。
あれから一週間。
真島さんからの電話はまだ鳴らない。
「絵梨、久しぶりに飲みにいかない?」
デスクで携帯画面と睨めっこしていたところに、同期の青田がやってきた。
「そっちもひと段落付いたんだろ?久々に同期でさ、パーッと」
片手でジョッキを傾ける仕草をしてくる。
ただ電話を待っているのも釈だし、悪くない提案かも知れなかった。
「んー...焼肉以外なら」
「焼肉嫌いだっけ?」
真島さんと食べる以外の焼肉はあんまり魅力がない。
きっとハンバーガーもそう。
違うお店に一緒に行ってしまったら、どこもそうなるんだろうなと思った。
定時を少し過ぎた頃、私と青田ともう二人でオフィスを出た。
行き先は神室町にある安居酒屋だ。
四人でビールを傾け、仕事の愚痴を言い合う。
これぞTHE・同期。
「なんか絵梨、雰囲気変わった?」
「そう?」
唐突に同期の香織に言われ首を傾げる。
「なんか色っぽくなった気がする。もしかして彼氏でもできた?」
香織の言葉に残りの二人が身を乗り出してくる。
あぁ、やだ。こういうの苦手。
「...できてません」
一瞬真島さんの顔が浮かぶが、あれは彼氏と呼べる関係ではない。
時々ご飯を食べるだけ。キスはするけど。
「今の間なに?やだ、なんか訳あり?」
「違いますー!もう、うるさい!」
私は追求を逃れるためにビールを飲み干し、三人にも飲むよう強制する。
そんなことを繰り返しているうちに、全員良い感じに酒が回った。
「ね、誰かの携帯、鳴ってなぁい?」
香織の言葉を合図に皆が鞄やらポケットやらを弄る。
鞄に入れた私の手に振動する物体が触れたので、「はーい、私でした」と手を上げた。
携帯電話を取り出して表示を見る。
そこに表示された名前に少し酔いが覚めた。
「あ、もしもし」
「おう、絵梨ちゃん。何しとんの?」
「今は、えと、飲み会で」
電話の主は真島さんで、私はキョロキョロと周りを見渡した。
目が合った同期三人はニヤニヤしていて、香織は「オトコ?」と親指を突き立ててくる。
「なんや、忙しいんか」
「全然忙しくないです」
私がそう言った瞬間、隣にいた青田が肩を組んできた。
「忙しくないってなんだよー。
ねぇ、絵梨。俺って男がいながら誰と電話してんのぉ?」
完全に悪酔い。
青田の声は電話の向こうに届いたはずだ。
私は慌てて青田を引き剥がすと、走って居酒屋の外に出た。
「あの、同期が、すごく酔っ払ってて」
言い訳しなければならない関係でもないのに、必死になっている自分が少し虚しい。
「二人じゃなくて四人で飲んでるんです」
「別にわしは何人でもかまへんけど。
忙しいみたいやから今度にするわ」
「待ってください!」
電話を切られそうな雰囲気を感じてとっさに引き留める。
「あの、全然忙しくないですから、本当に」
「ふうん。ほなミレニアムタワーまで来れるか?」
「え」
「忙しくないんやったら、そっち抜けだしてわしんとこまで来れるやろ」
それはまるで試すみたいな言い方だった。
この人の意地悪な性分をわかって、私はもう「はい」と言う他ない。
切られた電話を握り締め、店内に戻る。
同期への言い訳を必死に考えた。