My everything 0.5
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彼が私の世界の全てだった。
小さい頃、肌の色も話す言葉も同じなのに
なぜだか周りの誰とも馴染めなかった。
幼さ故に理由もわからず、毎日がただひたすら息苦しかった。
病気がちの母に甘えることもできず、父とは手を繋いだ記憶もない。
いつしか自分のいる景色の中には、色も香りも味もしなくなった。
どこにいてもモノクロの、無機質な世界が広がっている。
だからあの日、一人ぼっちの私をあなたが見つけてくれて良かったと心の底から思っている。
「明菜でしょ?」
家に帰りたくなくて、近所の階段に座り込む私に誰かが声をかけてきた。
母以外に初めて名前を呼ばれた気がする。
「俺、天佑。お前ガリガリだから、飯食わせてやるよ」
幾つか年上だと思われる少年が無言の私の手を引いた。
「今日から俺がお前の兄ちゃんね。哥哥、わかる?」
コクリと頷いた私の頭をくしゃくしゃと撫で、天佑と名乗った少年は満足そうに歩き出す。
「俺ん家、飯屋なの。親父にきっちり仕込まれたから、俺の作る炒飯マジ最高だよ」
少年に連れてこられたのは、母から近寄ってはいけないと教えられた慶錦飯店という大きな建物だった。
理由はわからないが、とにかく私がここに近付こうとすると鬼のように叱られたものだ。
「お母さんに怒られる」
小さな声で抵抗した私の前に、天佑はしゃがんで笑顔を見せる。
「俺が大丈夫って言ったら大丈夫なの。まだわかんないかも知れないけど、そうゆう風になってるの。
この町は俺がルールなんだよ」
なんだか妙に説得力があって、再び手を引かれた時には共に歩き出していた。
お母さんに怒られるかも知れない。
でも怒られてもいい。
一人ぼっちはもう嫌だ。
お兄ちゃんと名乗った少年に案内されるがまま、彼の部屋に足を踏み入れた。
「明菜はいつでも好きな時にここに来ていいよ。今炒飯作ってくるから、ちょっと待っててね」
何故あの人はこんなにも自分に親切にしてくれるのか。
理由がわからないまま、大人しく座って待つことにした。
相変わらず景色はモノクロで、匂いもしない。
暫く経った頃、「お待たせぇー」と言って、天佑がお盆に乗せた炒飯を持ってきた。
目の前にそれを差し出し、「好きなだけ食べなよ」と笑う。
どこから持ってきたのか大きな虎のぬいぐるみを抱え、対面に座ると
「明菜ちゃん、冷めちゃうよー」
と虎の前足を無理やり揺すった。
「いただきます」
と小さな声で言ってから、ハッと顔を上げる。
母にはこうしないと叱られたが、学校や父の前でこれをやると白い目で見られた。
けれど天佑はニコニコとして「いい子だねぇ」と笑っている。
驚きを隠せないまま、目の前の炒飯を蓮華で掬った。
口に含んだ瞬間、突然世界が賑やかになった気がした。
音が鮮明に聞こえ、香ばしい香りが鼻腔を擽る。
次にはハッキリと「美味しい」と感じ、目の前の景色に彩りが加わった。
「美味しいでしょー?愛情たっぷり、天佑くんの特性炒飯」
パチクリと瞬きを繰り返す私の頭をポンポンと撫でると、
「たくさん食べなきゃ大きくなれないよ。まだたくさんあるからいっぱい食べな」と天佑は笑った。
ここは温かいと私は思った。
こんなに温かい場所は他に知らない。
気付けば涙が溢れていて、泣きながら炒飯を頬張った。
自分の為だけに作られた手料理からは、感じたことない愛情を感じる。
こんなに美味しい食べ物を生まれて初めて食べた。
「哥哥」
“お兄ちゃん“そう呼ぶと「ん?」と天佑が返事する。
この日から私にとって、哥哥が世界の全てになった。
小さい頃、肌の色も話す言葉も同じなのに
なぜだか周りの誰とも馴染めなかった。
幼さ故に理由もわからず、毎日がただひたすら息苦しかった。
病気がちの母に甘えることもできず、父とは手を繋いだ記憶もない。
いつしか自分のいる景色の中には、色も香りも味もしなくなった。
どこにいてもモノクロの、無機質な世界が広がっている。
だからあの日、一人ぼっちの私をあなたが見つけてくれて良かったと心の底から思っている。
「明菜でしょ?」
家に帰りたくなくて、近所の階段に座り込む私に誰かが声をかけてきた。
母以外に初めて名前を呼ばれた気がする。
「俺、天佑。お前ガリガリだから、飯食わせてやるよ」
幾つか年上だと思われる少年が無言の私の手を引いた。
「今日から俺がお前の兄ちゃんね。哥哥、わかる?」
コクリと頷いた私の頭をくしゃくしゃと撫で、天佑と名乗った少年は満足そうに歩き出す。
「俺ん家、飯屋なの。親父にきっちり仕込まれたから、俺の作る炒飯マジ最高だよ」
少年に連れてこられたのは、母から近寄ってはいけないと教えられた慶錦飯店という大きな建物だった。
理由はわからないが、とにかく私がここに近付こうとすると鬼のように叱られたものだ。
「お母さんに怒られる」
小さな声で抵抗した私の前に、天佑はしゃがんで笑顔を見せる。
「俺が大丈夫って言ったら大丈夫なの。まだわかんないかも知れないけど、そうゆう風になってるの。
この町は俺がルールなんだよ」
なんだか妙に説得力があって、再び手を引かれた時には共に歩き出していた。
お母さんに怒られるかも知れない。
でも怒られてもいい。
一人ぼっちはもう嫌だ。
お兄ちゃんと名乗った少年に案内されるがまま、彼の部屋に足を踏み入れた。
「明菜はいつでも好きな時にここに来ていいよ。今炒飯作ってくるから、ちょっと待っててね」
何故あの人はこんなにも自分に親切にしてくれるのか。
理由がわからないまま、大人しく座って待つことにした。
相変わらず景色はモノクロで、匂いもしない。
暫く経った頃、「お待たせぇー」と言って、天佑がお盆に乗せた炒飯を持ってきた。
目の前にそれを差し出し、「好きなだけ食べなよ」と笑う。
どこから持ってきたのか大きな虎のぬいぐるみを抱え、対面に座ると
「明菜ちゃん、冷めちゃうよー」
と虎の前足を無理やり揺すった。
「いただきます」
と小さな声で言ってから、ハッと顔を上げる。
母にはこうしないと叱られたが、学校や父の前でこれをやると白い目で見られた。
けれど天佑はニコニコとして「いい子だねぇ」と笑っている。
驚きを隠せないまま、目の前の炒飯を蓮華で掬った。
口に含んだ瞬間、突然世界が賑やかになった気がした。
音が鮮明に聞こえ、香ばしい香りが鼻腔を擽る。
次にはハッキリと「美味しい」と感じ、目の前の景色に彩りが加わった。
「美味しいでしょー?愛情たっぷり、天佑くんの特性炒飯」
パチクリと瞬きを繰り返す私の頭をポンポンと撫でると、
「たくさん食べなきゃ大きくなれないよ。まだたくさんあるからいっぱい食べな」と天佑は笑った。
ここは温かいと私は思った。
こんなに温かい場所は他に知らない。
気付けば涙が溢れていて、泣きながら炒飯を頬張った。
自分の為だけに作られた手料理からは、感じたことない愛情を感じる。
こんなに美味しい食べ物を生まれて初めて食べた。
「哥哥」
“お兄ちゃん“そう呼ぶと「ん?」と天佑が返事する。
この日から私にとって、哥哥が世界の全てになった。