My everything 0.5
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部屋に辿り着くなり熱いシャワーを浴びた。
腰にタオルを巻いたままソファに座り込む。
綺麗に体を洗ったはずなのに、鼻の奥にこびりついた血生臭さが拭えない。
「...もう、だめだ」
あれからもう二週間。
我慢の限界だった。
ドライヤーをかける間も惜しいまま、適当に服を羽織って家を出た。
目的地までの足取りは重い。
ちょっと今拒絶されたら立ち直れないな...
角を曲がればすぐそこに目当ての家があった。
二階の窓を確認し部屋に明かりが灯っていることに安堵する。
すぐさま携帯を耳に当てた。
「...天佑?」
数回のコールの後、戸惑いを含んだ声で名を呼ばれる。
「今家の前にいるんだけど。出てきてよ」
返事も待たず電話を切ると、ぼうっと明菜の部屋の窓を眺める。
数分後には明かりが消え、バタバタと彼女が家から飛び出してきた。
可愛い、しっぽ振ってる犬みたい
嬉しさと戸惑いを含んだ表情でこちらを見上げる明菜は、風呂上がりなのか少し濡れた髪に化粧気のない顔がまた色っぽかった。
「急になに?」
努めて冷たく振る舞っているのが手に取るようにわかる。
「明菜ちゃんのことだから、お兄ちゃんがいないと寝れなくて泣いてるんじゃないかと思って、迎えにきてあげた」
そう言うと先に歩き出す。
こうすれば絶対に明菜が後ろをついてくるとわかっていた。
「待ってよ。私、怒ってるんだから」
後ろからかけられた声を無視するが、耳を澄ませば自分の後ろにきちんと明菜の足音がついてくる。
やばい、ニヤけそう。
明菜のいじらしさに満足しながら、同時に訳もわからなく後悔した。
俺たちはいつもこの繰り返しだ。
「天佑、なんかあった?」
「んー?なんで?」
明菜の問いに背中越しで答える。
「だって今日、まだお酒飲んでないみたいだから。天佑が真っ直ぐ帰ってくる時はなんかあった時だもん」
可愛いだけじゃなく、鋭いところもある
「抗争?喧嘩?怪我はしてない?」
心底心配というその声に、怒ってたんじゃないのかよと内心笑った。
「怪我なんかしないよー。俺強いもん」
激しい抗争や喧嘩の後は、血生臭さが洗っても洗っても落ちない気がした。
そんな夜は必ず明菜に会いたくなる。
人によっては血を見た後に性欲が高まる、なんて変態もいるが趙は違った。
明菜に会って顔を見ているだけで、自分の汚れが洗われていく気がするのだ。
ただ明菜と話がしたい。
いやに昂った感情が明菜と話すだけで、整理されていくように感じる。
言わば精神安定剤のようなものだ。
不向きなポジションに持ち上げられている反動かもしれなかった。
「我本來想和你說話的」
"お前と話がしたかったんだよ"
それはまるで合言葉のように、二人の距離をまた元に戻してしまう。
捕まえては突き放し、もう幾度となくこれを繰り返してきた。
「もう部屋には女の人呼ばないで」
「うん」
「布団も枕もカバーも全部買い直して」
「うん」
「...本当はベッドも買い直して欲しい」
後ろから聞こえる可愛い我儘に、殺気だった心がどんどん癒されていくのがわかる。
「もう全部買い直してあるよ。明菜ちゃんが言いそうなことは、全部お見通しってワケ」
家に着く頃には明菜の機嫌は治っていて、二人で並んで真新しいベッドに入った。
飄々と話す趙の言葉に、明菜が心地よく相槌を打つ。
まるでそれは子守唄みたいに、趙の瞼を重くする。
どっと疲れた一日だった。
明菜が側にいてくれるから、こんな日こそ酒がなくても眠ることができる。
目を瞑り意識を手放した趙の顔に、明菜がそっと手を伸ばした。
「喜歡」
"好き"
決して届くことのない思いを胸に、明菜は目を瞑った。
自分だけの天佑の香りを胸一杯に感じながら。
腰にタオルを巻いたままソファに座り込む。
綺麗に体を洗ったはずなのに、鼻の奥にこびりついた血生臭さが拭えない。
「...もう、だめだ」
あれからもう二週間。
我慢の限界だった。
ドライヤーをかける間も惜しいまま、適当に服を羽織って家を出た。
目的地までの足取りは重い。
ちょっと今拒絶されたら立ち直れないな...
角を曲がればすぐそこに目当ての家があった。
二階の窓を確認し部屋に明かりが灯っていることに安堵する。
すぐさま携帯を耳に当てた。
「...天佑?」
数回のコールの後、戸惑いを含んだ声で名を呼ばれる。
「今家の前にいるんだけど。出てきてよ」
返事も待たず電話を切ると、ぼうっと明菜の部屋の窓を眺める。
数分後には明かりが消え、バタバタと彼女が家から飛び出してきた。
可愛い、しっぽ振ってる犬みたい
嬉しさと戸惑いを含んだ表情でこちらを見上げる明菜は、風呂上がりなのか少し濡れた髪に化粧気のない顔がまた色っぽかった。
「急になに?」
努めて冷たく振る舞っているのが手に取るようにわかる。
「明菜ちゃんのことだから、お兄ちゃんがいないと寝れなくて泣いてるんじゃないかと思って、迎えにきてあげた」
そう言うと先に歩き出す。
こうすれば絶対に明菜が後ろをついてくるとわかっていた。
「待ってよ。私、怒ってるんだから」
後ろからかけられた声を無視するが、耳を澄ませば自分の後ろにきちんと明菜の足音がついてくる。
やばい、ニヤけそう。
明菜のいじらしさに満足しながら、同時に訳もわからなく後悔した。
俺たちはいつもこの繰り返しだ。
「天佑、なんかあった?」
「んー?なんで?」
明菜の問いに背中越しで答える。
「だって今日、まだお酒飲んでないみたいだから。天佑が真っ直ぐ帰ってくる時はなんかあった時だもん」
可愛いだけじゃなく、鋭いところもある
「抗争?喧嘩?怪我はしてない?」
心底心配というその声に、怒ってたんじゃないのかよと内心笑った。
「怪我なんかしないよー。俺強いもん」
激しい抗争や喧嘩の後は、血生臭さが洗っても洗っても落ちない気がした。
そんな夜は必ず明菜に会いたくなる。
人によっては血を見た後に性欲が高まる、なんて変態もいるが趙は違った。
明菜に会って顔を見ているだけで、自分の汚れが洗われていく気がするのだ。
ただ明菜と話がしたい。
いやに昂った感情が明菜と話すだけで、整理されていくように感じる。
言わば精神安定剤のようなものだ。
不向きなポジションに持ち上げられている反動かもしれなかった。
「我本來想和你說話的」
"お前と話がしたかったんだよ"
それはまるで合言葉のように、二人の距離をまた元に戻してしまう。
捕まえては突き放し、もう幾度となくこれを繰り返してきた。
「もう部屋には女の人呼ばないで」
「うん」
「布団も枕もカバーも全部買い直して」
「うん」
「...本当はベッドも買い直して欲しい」
後ろから聞こえる可愛い我儘に、殺気だった心がどんどん癒されていくのがわかる。
「もう全部買い直してあるよ。明菜ちゃんが言いそうなことは、全部お見通しってワケ」
家に着く頃には明菜の機嫌は治っていて、二人で並んで真新しいベッドに入った。
飄々と話す趙の言葉に、明菜が心地よく相槌を打つ。
まるでそれは子守唄みたいに、趙の瞼を重くする。
どっと疲れた一日だった。
明菜が側にいてくれるから、こんな日こそ酒がなくても眠ることができる。
目を瞑り意識を手放した趙の顔に、明菜がそっと手を伸ばした。
「喜歡」
"好き"
決して届くことのない思いを胸に、明菜は目を瞑った。
自分だけの天佑の香りを胸一杯に感じながら。