部下を見張りにつかせてから1週間が経とうとしていた。
そろそろ引き上げさせても良いかも知れない。
事務所のデスクに足を乗せたまま真島は部下に口を開いた。


「おう、あの見張らせとる店、どうや？」

「何も変わったことはありません」

「…ほうか、なら終わりやな」

ちょっとガッカリする自分がいることに真島は驚く。
何もないに越したことはないというのに。

「来月には店、無くなってるかも知れません」

部下としては世間話のつもりだったかも知れなかった。
けれどその言葉に真島は顔を険しくする。

「あ？どういう意味や」

「え！…あ、いや、あまり流行っていないみたいで」

「すんません」と呟く男の頭を思いきりはたく。

「アホ！そういうこともきちんと報告せぇ」

真島は急いでデスクから立ち上がると「金庫番だけ事務所に残しとき」と言って歩き出した。

「カチコミですか？」

慌てて後ろをついてくる男に「飯や！飯！」と答え、真島は声を荒げた。

「手ぇ空いてるやつは全員ついて来るんや！物騒なもんは置いてこい！」

組長の声に、真島組からわらわらと強面の男たちが出て行った。