あなた...小さなレストランの若きオーナー
狂犬の気まぐれ
空欄の場合は"柚葵"になります
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「わしの家から事務所までの道に、『GRAND』っちゅう飯屋があるやろ。
あそこ何人か交代で暫く見張っとき」
「どっか組絡みですか?」
真島の突拍子もない命令に、部下が首を傾げる。
「誰が質問してええって言うた?親の命令やったら黙ってきかんかい」
デスクの上にドン!と足を投げ出し、真島が部下を睨む。
「すんませんでした!」
慌てて部屋を出ていく男の背中に「小さいことでも変わったことがあったら報告せぇ!」と声を荒げた。
只の飯屋や。
なんかあるとは思わへん。
けどまぁ、こないだみたいなことがあるかもわからんし。
自分に言い聞かせるように言い訳する。
こんなことを考えている自分が可笑しかった。
「うまかったなぁ、あのスパゲッティ」
潰れてしまうには惜しいくらい、良い店だったと真島は思う。
小さいけれど味は確かで、雰囲気も良い。
毎日頑張って作った店なだけはある。
もし自分が極道ではなかったなら、おそらく通い詰めていたかも知れない。
昨日もらった名刺を眺め「GRAND」の店名を指でなぞった。
「そういえば店の名前の由来、聞き忘れてもうたなぁ」
『豪華・絢爛・壮大な』そんな意味を持つ店名には似つかわしくない規模の店だった。
まだ自身が20代だったころ、支配人を務めていた店を思い出す。
変な偶然もあるもんやな。
ただの気まぐれだろうと自分に言い聞かせる。
昨日助けたのだって、ただの気まぐれでしかなかった。
たまたま毎日見てた姉ちゃんが絡まれとって、たまたまそこに通りかかっただけや。
あんだけ精出して頑張ってるの見とったから、ちょっと情が移っただけやないか。
ほんま、そんだけや。
二度と自分が会うことはないだろうと思い、真島はその名刺をデスクにしまった。
暫く部下に見張らせて何もなかったら、それで終わりにしようと思っていた。
もし仮に潰れてしまうのだとしたらそれも仕方ない。
これはただの気まぐれなのだから。