あなた...小さなレストランの若きオーナー
最終章 GRAND
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俺の名前は西田。
東城会直系真島組の構成員、いわゆるヤクザだ。
自分のいる組は東城会の中でもかなり幅を利かせていて、組長である真島吾朗を誰よりも尊敬している。
親父のすごい所と言えば、やっぱりその桁違いの強さだ。
見た目も派手で破天荒だが、その辺の極道じゃ太刀打ちできないくらい漢気もある。
時には鉄拳が飛んでくることもあるが、それはヘマをやらかしちまった時ぐらいで、基本的には愛の鞭だと思っている。
だから本当に尊敬してるんだ、親父のことは。
本当に。
「ちゃんとうさぎちゃんにしてや」
「はいはい、わかりました」
「あーんもしてや」
「えっ...あーんですか?」
「当たり前や。柚葵があーんしてくれへんとりんご食べられへん」
病室のベッドで親父が甘えている相手は、恋人の柚葵さんだ。
目を覚ましてからずっとこんな調子で、正直俺は目のやり場に困っている。
でも俺は親父を尊敬しているんだ、本当に。
「せや、いつから店再開するんや」
「...どうでしょう。私一人じゃ難しいですし」
店と言うのは柚葵さんが経営する小さな飯屋のことで、名前をGRANDという。
柚葵さんが作る飯は世界で一番美味いが、訳あってアルバイトの兄ちゃんが消えちまったので困っているらしかった。
「勇人やったな、あの兄ちゃん。のぉ、西田」
「...あ!はい!」
声を掛けられたことに一瞬気付かず、慌てた。
親父が元気だったら、多分今頃前歯が無くなっていただろう。
親父に差し出された右手に、俺は手にしていた封筒を手渡した。
「あの兄ちゃんな、今は横浜におるみたいやわ」
「...横浜?」
「横浜にはな、警察もヤクザも手出しできへん領域がある。そこにうまい具合に逃げ込んだらしいわ」
親父は手に持っていた資料を柚葵さんに手渡すと、「生きとるから安心しいや」と言った。
本当は親父の手引きがあったのだけれど、野暮なことは口にしない。俺も少しは賢くなった。
「あとは店の人員やったなぁ...一人おるわ。
役に立つかわからへんけど暇しとるのが」
アルバイトの手配までしようとしているのだから、親父はとことん柚葵さんに惚れ込んでいるらしい。
うさぎちゃんの下りはちょっと見たくなかったけれど、俺はこの件を通してますます親父を好きになった。
やっぱり俺はこの人のことを尊敬している。
「西田、お前暫くGRAND手伝ったれや」
「はい!...え?あ...え?」
親父の言葉に目を丸くすると、「ウエイターくらいしっかりやらんかい!」と怒鳴られたので、ちょっとちびりそうになった。
「お前ちぃとは役に立たんかい、このボケ!」
親父は怒っているし、柚葵さんは笑っているので、どうやら俺に選択肢はないらしい。
まぁ柚葵さんのうまい飯が食えるなら、悪くないかも知れなかった。
「西田さん、私厳しいですけどいいですか?」
「え、いや、はい!頑張ります!」
「...ヘマしたらまかないはないですよ」
「え!」
めちゃくちゃ可愛い顔で笑う癖に、悪魔みたいなことを言う。
この人はちょっぴり、親父に毒されたのかも知れない。
「...それでも俺は、一生親父と柚葵さんに付いて行くっすよ」
「誰が名前で呼んでええ言うたんや!」
俺の顔に向かって花瓶が飛んできたので、今度は本当にちょっとちびった。
それでもやっぱり俺は、親父を尊敬している。
ーーーーーfin.
東城会直系真島組の構成員、いわゆるヤクザだ。
自分のいる組は東城会の中でもかなり幅を利かせていて、組長である真島吾朗を誰よりも尊敬している。
親父のすごい所と言えば、やっぱりその桁違いの強さだ。
見た目も派手で破天荒だが、その辺の極道じゃ太刀打ちできないくらい漢気もある。
時には鉄拳が飛んでくることもあるが、それはヘマをやらかしちまった時ぐらいで、基本的には愛の鞭だと思っている。
だから本当に尊敬してるんだ、親父のことは。
本当に。
「ちゃんとうさぎちゃんにしてや」
「はいはい、わかりました」
「あーんもしてや」
「えっ...あーんですか?」
「当たり前や。柚葵があーんしてくれへんとりんご食べられへん」
病室のベッドで親父が甘えている相手は、恋人の柚葵さんだ。
目を覚ましてからずっとこんな調子で、正直俺は目のやり場に困っている。
でも俺は親父を尊敬しているんだ、本当に。
「せや、いつから店再開するんや」
「...どうでしょう。私一人じゃ難しいですし」
店と言うのは柚葵さんが経営する小さな飯屋のことで、名前をGRANDという。
柚葵さんが作る飯は世界で一番美味いが、訳あってアルバイトの兄ちゃんが消えちまったので困っているらしかった。
「勇人やったな、あの兄ちゃん。のぉ、西田」
「...あ!はい!」
声を掛けられたことに一瞬気付かず、慌てた。
親父が元気だったら、多分今頃前歯が無くなっていただろう。
親父に差し出された右手に、俺は手にしていた封筒を手渡した。
「あの兄ちゃんな、今は横浜におるみたいやわ」
「...横浜?」
「横浜にはな、警察もヤクザも手出しできへん領域がある。そこにうまい具合に逃げ込んだらしいわ」
親父は手に持っていた資料を柚葵さんに手渡すと、「生きとるから安心しいや」と言った。
本当は親父の手引きがあったのだけれど、野暮なことは口にしない。俺も少しは賢くなった。
「あとは店の人員やったなぁ...一人おるわ。
役に立つかわからへんけど暇しとるのが」
アルバイトの手配までしようとしているのだから、親父はとことん柚葵さんに惚れ込んでいるらしい。
うさぎちゃんの下りはちょっと見たくなかったけれど、俺はこの件を通してますます親父を好きになった。
やっぱり俺はこの人のことを尊敬している。
「西田、お前暫くGRAND手伝ったれや」
「はい!...え?あ...え?」
親父の言葉に目を丸くすると、「ウエイターくらいしっかりやらんかい!」と怒鳴られたので、ちょっとちびりそうになった。
「お前ちぃとは役に立たんかい、このボケ!」
親父は怒っているし、柚葵さんは笑っているので、どうやら俺に選択肢はないらしい。
まぁ柚葵さんのうまい飯が食えるなら、悪くないかも知れなかった。
「西田さん、私厳しいですけどいいですか?」
「え、いや、はい!頑張ります!」
「...ヘマしたらまかないはないですよ」
「え!」
めちゃくちゃ可愛い顔で笑う癖に、悪魔みたいなことを言う。
この人はちょっぴり、親父に毒されたのかも知れない。
「...それでも俺は、一生親父と柚葵さんに付いて行くっすよ」
「誰が名前で呼んでええ言うたんや!」
俺の顔に向かって花瓶が飛んできたので、今度は本当にちょっとちびった。
それでもやっぱり俺は、親父を尊敬している。
ーーーーーfin.
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