あなた...小さなレストランの若きオーナー
最終章 GRAND
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「思ったよりも回復が早くて安心しました」
メガネを押し上げながらそう言う倉木は、相変わらず無表情で淡々としていた。
けれどその顔にはまだ治りきっていない痣がいくつかあり、それがあの日の彼を思い起こさせる。
柚葵の中での倉木のイメージはこうだ。
本当は熱くて、怒ると結構やばい人。
「親父はまだ眠っています」
どうぞ、と促されて病室の扉を開けると、そこに真島の姿があった。
よく日の当たる立派な個室で、気持ちよさそうに眠っている。
柚葵は脇に置かれた椅子に座り、少しだけ起こされたベッドに眠る男の顔を、じっと眺めた。
手袋に覆われていない真島の右手を握れば、じんわりとした温かさが広がった。
あの事件から数日、真島の目はまだ覚めていない。
柚葵を庇ったせいで深い刺し傷を負い、回復まではかなり時間がかかるらしかった。
医者によれば命に別状はなく、目が覚めないのは体力の消耗が激しかったことも一因だという。
「先程医者からは、いずれ目が覚めるだろうと」
倉木がお茶を入れてくれ、それをサイドテーブルに置いてくれた。短く礼を言う。
「東城会は大丈夫だったんですよね?」
「ええ、ご心配なく」
あの日近江連合から襲撃を受けたものの、東城会本部はなんとか持ち堪えたのだという。
倉木たちが到着する頃にはもう、決着が着いていたそうだ。
「西田から話を聞いた柏木の叔父貴の、咄嗟の判断だったようです。近江連合に襲撃される前に、東城会の組員総出で本部に向かったと聞いています」
柚葵にとっては柏木が誰なのかも、それがどんなにすごいことかも分からない。
けれど真島の目が覚めたときに、きっと彼は心の底から安心するだろうと思った。
その時、握っていた真島の右手が、ピクリと動いた気がした。
「..れ...めん...やな」
「...真島さん...?」
小さく呟かれた声に耳を傾けるように、柚葵は真島の顔を覗き込んだ。
薄らとを目を開けた彼が、苦しそうに微笑んでいる。
「冷麺やな...って言ったんや」
「親父!」
倉木が慌てたようにベッドに駆け寄ってくる。
「親父、親父」と泣き出しそうな子供みたいに呟いていて、それを見た真島はまた笑った。
「あの人はやっぱりバケモンや...倉木、贈答用の冷麺探して...死ぬほど送ったれや...」
「...はい、今すぐに手配します」
倉木は涙を堪えるような顔で、病室から駆け出して行く。
残された柚葵は真島の手を両手で握り、溢れんばかりに涙を溢した。
「そないな顔すなや...俺は簡単に死ぬようなタマやないで」
「ごめんなさい...ごめんなさい、私...私の...せいで...」
柚葵が握っていた大きな右手が、頭にポンと乗せられた。
嗚咽混じりに謝罪を繰り返す柚葵の頭を、最初はぎこちなく、その後は優しく真島の手が撫でてくれる。
「柚葵が生きとって、ほんまに安心したわ...
もう...あない危ないことはしたらあかん。
俺は守ってもらわんでも...死んだりせぇへん」
「せやから」と真島は続ける。
「せやから、俺にお前を守らせてぇな...
柚葵を守るんが、俺の役目や」
その言葉に柚葵はまた涙を溢して、何度も頷いた。
「好きやで、ほんまに」
「私も好きです」という言葉は、嗚咽に掻き消されて、まともな言葉にならない。
まるで壮大な夢の中にいるみたいに、真島の言葉は一瞬で柚葵の体を幸せで包み込んでいく。
この人の腕をもう一生離さない、そう誓った。
メガネを押し上げながらそう言う倉木は、相変わらず無表情で淡々としていた。
けれどその顔にはまだ治りきっていない痣がいくつかあり、それがあの日の彼を思い起こさせる。
柚葵の中での倉木のイメージはこうだ。
本当は熱くて、怒ると結構やばい人。
「親父はまだ眠っています」
どうぞ、と促されて病室の扉を開けると、そこに真島の姿があった。
よく日の当たる立派な個室で、気持ちよさそうに眠っている。
柚葵は脇に置かれた椅子に座り、少しだけ起こされたベッドに眠る男の顔を、じっと眺めた。
手袋に覆われていない真島の右手を握れば、じんわりとした温かさが広がった。
あの事件から数日、真島の目はまだ覚めていない。
柚葵を庇ったせいで深い刺し傷を負い、回復まではかなり時間がかかるらしかった。
医者によれば命に別状はなく、目が覚めないのは体力の消耗が激しかったことも一因だという。
「先程医者からは、いずれ目が覚めるだろうと」
倉木がお茶を入れてくれ、それをサイドテーブルに置いてくれた。短く礼を言う。
「東城会は大丈夫だったんですよね?」
「ええ、ご心配なく」
あの日近江連合から襲撃を受けたものの、東城会本部はなんとか持ち堪えたのだという。
倉木たちが到着する頃にはもう、決着が着いていたそうだ。
「西田から話を聞いた柏木の叔父貴の、咄嗟の判断だったようです。近江連合に襲撃される前に、東城会の組員総出で本部に向かったと聞いています」
柚葵にとっては柏木が誰なのかも、それがどんなにすごいことかも分からない。
けれど真島の目が覚めたときに、きっと彼は心の底から安心するだろうと思った。
その時、握っていた真島の右手が、ピクリと動いた気がした。
「..れ...めん...やな」
「...真島さん...?」
小さく呟かれた声に耳を傾けるように、柚葵は真島の顔を覗き込んだ。
薄らとを目を開けた彼が、苦しそうに微笑んでいる。
「冷麺やな...って言ったんや」
「親父!」
倉木が慌てたようにベッドに駆け寄ってくる。
「親父、親父」と泣き出しそうな子供みたいに呟いていて、それを見た真島はまた笑った。
「あの人はやっぱりバケモンや...倉木、贈答用の冷麺探して...死ぬほど送ったれや...」
「...はい、今すぐに手配します」
倉木は涙を堪えるような顔で、病室から駆け出して行く。
残された柚葵は真島の手を両手で握り、溢れんばかりに涙を溢した。
「そないな顔すなや...俺は簡単に死ぬようなタマやないで」
「ごめんなさい...ごめんなさい、私...私の...せいで...」
柚葵が握っていた大きな右手が、頭にポンと乗せられた。
嗚咽混じりに謝罪を繰り返す柚葵の頭を、最初はぎこちなく、その後は優しく真島の手が撫でてくれる。
「柚葵が生きとって、ほんまに安心したわ...
もう...あない危ないことはしたらあかん。
俺は守ってもらわんでも...死んだりせぇへん」
「せやから」と真島は続ける。
「せやから、俺にお前を守らせてぇな...
柚葵を守るんが、俺の役目や」
その言葉に柚葵はまた涙を溢して、何度も頷いた。
「好きやで、ほんまに」
「私も好きです」という言葉は、嗚咽に掻き消されて、まともな言葉にならない。
まるで壮大な夢の中にいるみたいに、真島の言葉は一瞬で柚葵の体を幸せで包み込んでいく。
この人の腕をもう一生離さない、そう誓った。