勇人が隙を狙っていたのを真島は気付いていた。


ちょっとくらい切らしてやってもええやろ


それくらいの気持ちだった。
自分のせいで東城会が危ないかも知れない。
倉木が組員を引っ張って行った筈だが、間に合うかどうか...


そして何よりも柚葵のことが気掛かりだった。
体に傷を負わせ、恐怖を与えてしまった。
これは完全に自分の落ち度だと真島は思った。
それに自業自得ではあるが、勇人も一種の被害者だろう。
せめてもの償いとして、それで気が済むならちょっとくらい切らせてやってもいい。
これは自分が受けるべき罰なのだろうと。


けれど柚葵が駆けてくるのは予想外だった。
真島を庇うように体を広げ、こちらに向かって飛んでくる。


咄嗟に、間に合わないと判断した。


反射的に柚葵を抱き締め、真島は体を捻る。
生温かい感触がスーツに広がるのを感じた。
どうかこれが柚葵の血ではないようにと、柄にもなくそんなことを神に祈った。