あなた...小さなレストランの若きオーナー
罪と罰
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誉田に受けた傷の痛みより、目の前で繰り広げられる光景に意識が向いた。
真島も同じような黒い短刀を抜き、誉田と互角に張り合っている。
誉田ほどではないが、真島も奇声を上げ、物凄いスピードで短刀を振り回していた。
誉田の笑い声と、真島の笑い声が交互に木霊する。
「狂犬」
いつか聞いた噂話を思い出していた。
こんな狂気じみた真島を柚葵は知らない。
どれくらい互角の戦いが繰り広げられただろう。
「真島クン、時間切れやわ」
突然誉田がそう叫んだ。
次の瞬間には部屋に人が雪崩れ込んでくる。
そこには息を切らせた倉木たちと、そしておそらく近江連合と思われる男たちが立っていた。
「もうデート終わりやん。わしまだイッてへん」
不貞腐れたような顔をして誉田が短刀を放り投げる。
「遅漏は嫌われんで。さっさと素手でヤッて終いにしよかぁ」
その言葉を合図に再び争いが繰り広げられる。
誉田の奇声と、真島の奇声。
拳がぶつかる度に震える空気。
そして牙を剥き出しにするように、狂気に満ちた表情で暴れる倉木の姿に、柚葵は恐怖すら感じていた。
拳が肉に当たる音も、骨が折れる音も、血飛沫の音も初めて聞いた。
この人たちが極道ということは分かっていたはずなのに、今初めてそれに触れている。
どれくらい時間が経ったのだろう。
気付けば手足の拘束が解かれ、傍に血だらけの倉木が立っていた。
「姐さん、ご無事ですか」
いつもと同じ口調の倉木に、ほんの少しだけ安堵する。
見れば誉田以外の近江連合は全員床に倒れていて、彼だけは未だに真島と争っているようだった。
「真島クン、シィー!」
誉田は突然真島の口を塞ぐと、自分の唇にも人差し指を当てる。
「黒幕の登場や」
この男は相当耳が良いのだろう。
先程から柚葵の耳には何も聞こえないのに、人が来る度にその足音が聞こえているようだった。
その狂気じみた身体能力が、より誉田という存在に恐怖心を植え付けてくる。
柚葵は倉木に支えられたまま、部屋の入口に目を凝らした。
そこに現れた人物に、ただ驚愕する。
「勇人…?」