「鬼仁会やて...」

男の言葉に真島は耳を疑った。
とっくの大昔に、その組織は消滅したはずだった。

「そやでぇ！今はわし一人ぼっちやけど」

男はニヤニヤと笑い、手に持ったドスで柚葵の耳たぶを切った。
真っ赤な鮮血が彼女の服を汚していく。


「誉田ぁぁぁあ！」

「手数料やんかぁぁぁあ！」

男はまたイーヒッヒッ！と笑う。

「真島クンの質問に答えた手数料やんか！
まだなんか知りたいんか？教えたるわ！」

今度は柚葵の首筋に、ドスが当てられる。
そこは意図も簡単に傷をつけられ、赤い線がいくつもできる。

「わし逢坂相談役のお抱えなんや。
あの人はわしが好きそうな仕事だけ回してくれるさかい、好っきやねん」

また一つ二つと柚葵の首筋に傷がつけられる。
今すぐにでも動きたいのに、誉田が柚葵に近すぎて真島は手出しができない。

「真島クンほんまにええ顔するなぁ。
わし、興奮してイキそうやわぁ。
安心してぇな。わし喧嘩はちゃーんとサシでやるタイプやでぇ」

「鬼仁会っちゅうんは、お前みたいのしかなれへんのか」


西谷を思わせる誉田の言動に、真島は殺気を強くする。
宣言通り男は柚葵から離れると、首を回して間合いを取った。


「柚葵、ちょお目瞑っとれよ」


「ほな行くでぇぇぇええ！」


今から狂気のぶつかり合いが始まる。