あなた...小さなレストランの若きオーナー
歯車
空欄の場合は"柚葵"になります
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クラブを飛び出した真島の携帯が着信を知らせる。
画面に映し出された「非通知」の文字にすぐ通話ボタンを押した。
「誰や」
「さーて、誰でしょう」
すぐに一人の青年の顔が浮かび、真島の顔が殺気に歪んだ。
「柚葵を攫うたんは、おまえか」
「攫ったのは俺じゃないよ。攫ってくれとは言ったけど」
「柚葵はどこや!」
ケタケタと電話越しに笑う勇人に向かい、怒声を浴びせる。
「芸がないなぁ。
ちょっとは自分で考えられないの?」
「おまえ何が目的なんや!」
「だから言ったでしょ?
あんたをズタボロにすることだって。
あんたに関わったせいで、柚葵は今頃怖い思いをしてるんだよ、わかる?」
拉致の垢ない応酬に、真島の怒りはピークに達していた。
「仕方ないからヒントあげるね。
俺の苗字、逢坂って言うんだよ」
「逢坂...」
途端に喉元に痞えていたものがストン、と落ちる気がした。
「可哀想だから、早く柚葵を見つけてね」
プツリ、と電話が切られた。
真島はそれを力いっぱい投げ付ける。
「親父、その男は逢坂と名乗ったんですね」
電話を聞いていた倉木が、考えるように腕を組んだ。
「親父、お話が」
そして倉木は静かに"噂話"として仕入れたという情報を話し始める。
その内容はこうだった。
近江連合の相談役に「逢坂」という男がいる。
前会長の舎弟に当たる男で、表立った活躍はしていない。
ただその昔から、裏で糸を引いていたという噂があった。
近江連合の汚い仕事を一手に引き受け、影の立役者として暗躍していた男は、現会長すらも逆らえない存在だという。
近江連合に絶大な影響力を持つ男という訳だ。
「確かに近江には逢坂興行という会社が。
表向きの社長は違いますが、もしかすると...」
「なるほどな」
喉元に引っ掛かっていた小骨の正体に、また一つ溜飲が下がる。
「その逢坂に孫がいるという噂があります。
一人娘が産んだ子供で行方不明になっていると」
「...まさかそれが」
「逢坂の娘はとっくに死んでいます。
本人自身も病を患って先が長くないという噂が。
自分の跡目とまではいかなくとも、莫大な遺産を孫に継がせたいと思うのは普通のことかも知れません」
「勇人と近江が接触しとるっちゅうわけか」
「なんにせよ、東城会を潰したい近江連合と、あの青年の目的が一致したのかも知れません。
すいません、裏が取れずただの噂に過ぎないと思っていたものですから」
倉木が深々と頭を下げる。
まるで全ての線が一本に繋がったような気がした。
「親父!近江連合の潜伏先がわかりました」
組員が一枚のチラシを持ってくる。
テナント募集!と書かれた紙には、見覚えのあるビルの名前があった。
「うちのシマやないか」
「...申し訳ありません」
まさに灯台下暗しとはこのことだ。
倉木は深々と頭を下げるが、話は後だと目的地に向かって走り出した。
画面に映し出された「非通知」の文字にすぐ通話ボタンを押した。
「誰や」
「さーて、誰でしょう」
すぐに一人の青年の顔が浮かび、真島の顔が殺気に歪んだ。
「柚葵を攫うたんは、おまえか」
「攫ったのは俺じゃないよ。攫ってくれとは言ったけど」
「柚葵はどこや!」
ケタケタと電話越しに笑う勇人に向かい、怒声を浴びせる。
「芸がないなぁ。
ちょっとは自分で考えられないの?」
「おまえ何が目的なんや!」
「だから言ったでしょ?
あんたをズタボロにすることだって。
あんたに関わったせいで、柚葵は今頃怖い思いをしてるんだよ、わかる?」
拉致の垢ない応酬に、真島の怒りはピークに達していた。
「仕方ないからヒントあげるね。
俺の苗字、逢坂って言うんだよ」
「逢坂...」
途端に喉元に痞えていたものがストン、と落ちる気がした。
「可哀想だから、早く柚葵を見つけてね」
プツリ、と電話が切られた。
真島はそれを力いっぱい投げ付ける。
「親父、その男は逢坂と名乗ったんですね」
電話を聞いていた倉木が、考えるように腕を組んだ。
「親父、お話が」
そして倉木は静かに"噂話"として仕入れたという情報を話し始める。
その内容はこうだった。
近江連合の相談役に「逢坂」という男がいる。
前会長の舎弟に当たる男で、表立った活躍はしていない。
ただその昔から、裏で糸を引いていたという噂があった。
近江連合の汚い仕事を一手に引き受け、影の立役者として暗躍していた男は、現会長すらも逆らえない存在だという。
近江連合に絶大な影響力を持つ男という訳だ。
「確かに近江には逢坂興行という会社が。
表向きの社長は違いますが、もしかすると...」
「なるほどな」
喉元に引っ掛かっていた小骨の正体に、また一つ溜飲が下がる。
「その逢坂に孫がいるという噂があります。
一人娘が産んだ子供で行方不明になっていると」
「...まさかそれが」
「逢坂の娘はとっくに死んでいます。
本人自身も病を患って先が長くないという噂が。
自分の跡目とまではいかなくとも、莫大な遺産を孫に継がせたいと思うのは普通のことかも知れません」
「勇人と近江が接触しとるっちゅうわけか」
「なんにせよ、東城会を潰したい近江連合と、あの青年の目的が一致したのかも知れません。
すいません、裏が取れずただの噂に過ぎないと思っていたものですから」
倉木が深々と頭を下げる。
まるで全ての線が一本に繋がったような気がした。
「親父!近江連合の潜伏先がわかりました」
組員が一枚のチラシを持ってくる。
テナント募集!と書かれた紙には、見覚えのあるビルの名前があった。
「うちのシマやないか」
「...申し訳ありません」
まさに灯台下暗しとはこのことだ。
倉木は深々と頭を下げるが、話は後だと目的地に向かって走り出した。