あなた...小さなレストランの若きオーナー
歯車
空欄の場合は"柚葵"になります
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「…ん……」
ぼやける視界の中で柚葵を鈍い頭痛が襲った。
着衣越しでも床の冷たさが伝わり、状況を整理するのに時間が掛かる。
ハッと我に返った時には、薄暗い倉庫のような場所で縛られていることに気付く。
慌てて辺りを見渡せば、知らない男が一人煙草を蒸かしていた。
「おう、おはようさん」
ド派手な赤いスーツに身を包んだ男は、柚葵に向かって陽気に挨拶する。
「騒ぐなよぉ。あんまり乱暴したくないんや」
口を開こうとした柚葵を制するように男が笑った。
「器量良しやなぁ。あんまり騒ぐ女は好きやないねん」
「…誰ですか」
精一杯凄んだつもりだったが、柚葵の声は震えていた。
知らない男たちに帰り道に攫われた。
その事実が全身に重く圧し掛かってくる。
「誰やろなぁ。自己紹介でもした方がええの?」
ニヤニヤと笑う男に恐怖を感じた。
狂気じみた表情は演技などではなく、全身からはどす黒いオーラを放っている。
今まで見てきた極道のどれよりも、それが際立っているように見えた。
「とりあえずお姉ちゃん目印に真島クンと待ち合わせしとるとこ。
自己紹介はそれからでも遅くないんちゃう?」
男の目的が真島だと分かり、柚葵は背筋が冷たくなるのを感じた。
自分のせいで真島が危険な目に遭うかも知れない。
「東京の人は待ち合わせ言うたらやっぱハチ公なんかな。
忠犬の前で狂犬を待つって、なんやつまらん洒落みたいやなぁ」
男はそう言った後「イーヒッヒッ」と大声で笑った。
コンクリートに囲まれた部屋に、男の笑い声が反響する。
「真島さんが…目的なんですか…」
やっと絞り出した声は掠れていた。
柚葵のその質問に男はまた「イーヒッヒッ」と大声で笑う。
「真島くんは取っ掛かりなだけで、別にほんまの目的とちゃうよ。
ちょっと姉ちゃん攫うて痛い目見したってくれって奴もおってなぁ。せやけど東城会の幹部がカタギの女一人の為に組織蔑ろにしたら、そらおもろいことになるやろなぁ」
「お姉ちゃんも可哀そうになぁ」と男は続ける。
「ヤクザなんかに関わったせいで、こないこわぁい目に遭うて。
もうヤクザなんて懲り懲りやろなぁ。可哀そうになぁ、ほんまに」
男はそう言って両手で顔を覆い、泣く真似をする。
狂気に満ちた男の言動に柚葵はただ体を震わせた。
「とりあえず真島クン来るまで待とかぁ。
わしらもそっからしか話進められないねん」
柚葵はお願いだから来ないでと願った。
この男は絶対に危険だからと。
自分はどうなっても良いとさえ思った。
ぼやける視界の中で柚葵を鈍い頭痛が襲った。
着衣越しでも床の冷たさが伝わり、状況を整理するのに時間が掛かる。
ハッと我に返った時には、薄暗い倉庫のような場所で縛られていることに気付く。
慌てて辺りを見渡せば、知らない男が一人煙草を蒸かしていた。
「おう、おはようさん」
ド派手な赤いスーツに身を包んだ男は、柚葵に向かって陽気に挨拶する。
「騒ぐなよぉ。あんまり乱暴したくないんや」
口を開こうとした柚葵を制するように男が笑った。
「器量良しやなぁ。あんまり騒ぐ女は好きやないねん」
「…誰ですか」
精一杯凄んだつもりだったが、柚葵の声は震えていた。
知らない男たちに帰り道に攫われた。
その事実が全身に重く圧し掛かってくる。
「誰やろなぁ。自己紹介でもした方がええの?」
ニヤニヤと笑う男に恐怖を感じた。
狂気じみた表情は演技などではなく、全身からはどす黒いオーラを放っている。
今まで見てきた極道のどれよりも、それが際立っているように見えた。
「とりあえずお姉ちゃん目印に真島クンと待ち合わせしとるとこ。
自己紹介はそれからでも遅くないんちゃう?」
男の目的が真島だと分かり、柚葵は背筋が冷たくなるのを感じた。
自分のせいで真島が危険な目に遭うかも知れない。
「東京の人は待ち合わせ言うたらやっぱハチ公なんかな。
忠犬の前で狂犬を待つって、なんやつまらん洒落みたいやなぁ」
男はそう言った後「イーヒッヒッ」と大声で笑った。
コンクリートに囲まれた部屋に、男の笑い声が反響する。
「真島さんが…目的なんですか…」
やっと絞り出した声は掠れていた。
柚葵のその質問に男はまた「イーヒッヒッ」と大声で笑う。
「真島くんは取っ掛かりなだけで、別にほんまの目的とちゃうよ。
ちょっと姉ちゃん攫うて痛い目見したってくれって奴もおってなぁ。せやけど東城会の幹部がカタギの女一人の為に組織蔑ろにしたら、そらおもろいことになるやろなぁ」
「お姉ちゃんも可哀そうになぁ」と男は続ける。
「ヤクザなんかに関わったせいで、こないこわぁい目に遭うて。
もうヤクザなんて懲り懲りやろなぁ。可哀そうになぁ、ほんまに」
男はそう言って両手で顔を覆い、泣く真似をする。
狂気に満ちた男の言動に柚葵はただ体を震わせた。
「とりあえず真島クン来るまで待とかぁ。
わしらもそっからしか話進められないねん」
柚葵はお願いだから来ないでと願った。
この男は絶対に危険だからと。
自分はどうなっても良いとさえ思った。