あなた...小さなレストランの若きオーナー
右見て左見て、前を見て
空欄の場合は"柚葵"になります
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「…あの、真島さんは……」
黒塗りの高級車は皮の匂いと煙草の匂いがする。
暗いフィルムが貼られた窓から流れる景色を眺めた。
「親父は本当に申し訳ない、また連絡すると仰っていました」
倉木と名乗った男は無口だった。
西田とは違う丁寧な物腰に、この人が真島さんの下で働いているのは想像できないなと思う。
「そうですか」
落胆しているように見えなかったのだろうか。
バックミラー越しに、こちらを見られているようで柚葵は落ち着かなかった。
「親父は忙しい方ですから、今後もそういった事があれば私がお送りする手筈になっています」
業務連絡のような抑揚のない話し方は苦手だったが、今はそれが有難い気もした。
「…一人で帰れます」
「そういう訳にはいかないんですよ」
遠慮したつもりだったのにピシャリと否定されてしまった。
真島との仲を快く思われていないようで悲しくなる。
でも、もし勇人のことがばれてしまったら…
今朝の甘くとろけるような幸せを思い出す。
もう真島さんに嫌われてしまうかもしれない
柚葵は下唇を噛み締め、両手の拳をギュっと握った。
明日が定休日で本当に良かったと思う。
自分一人で抱えることのできない問題に心が締め付けられた。
もっと慎重になるべきだったのかも知れない
真島への思いが強すぎて、他に何も見えていなかった。
子供の頃、学校の先生に言われた言葉を思い出す。
右見て、左見て、また右を見て、それから前を見て歩き出さなくてはいけないよ
無謀に車道に向かって走り出した子供のようで、柚葵は自分を責めたくなる。