あなた...小さなレストランの若きオーナー
右見て左見て、前を見て
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「…久しぶりやな」
背後から聞こえた声に柚葵は目を瞑る。
明日になったら諦めよう。
そう思ったのに、見計らったみたいに男はやってくる。
平気で心を乱して、振り回す。
それでも怒れないのはどうしてだろう。
「こないだはうちの若いもんが世話になったなぁ」
真島の言葉にそっと振り返る。
言いたいことはたくさんあったはずなのに、男の手にある見覚えのある風呂敷に目が行った。
カツンカツンと足音を立てて、真島がカウンターに近付いてくる。
丁寧に包まれたそれを付け台に置くと「返しに来たんや」と男は笑った。
下唇を噛み締めたまま、柚葵は包みを受け取った。
暫く会っていないはずなのに、キスをしたのがついこの間のような気がして全身が熱くなる。
何か言わなくちゃと思うのに気まずくて何も言えない。
仕方なく風呂敷を広げた。
「……あは…あはははは」
突然笑い出した柚葵を真島がギョッとした顔で見る。
「な…なんや」
「あはははは!だって!」
ヒィヒィと笑いながらタッパーを指差す柚葵を真島はまだ不思議そうに見ていた。
「だって…こんな…綺麗に洗われて…」
風呂敷の中に丁寧に包まれたタッパーは綺麗に洗われ、しっかりと拭きあげられていた。
ヤクザの組長というイメージとあまりにかけ離れたそれに柚葵の笑いは止まらない。
「そ…そらそうやろ…洗わんで返す奴がおるかいな」
「だって…これ…真島さんが洗ったんですか?」
素肌に派手柄のジャケットを羽織るような男に似つかわしくない細やかさのギャップがすごい。
真島はカッと顔を赤くすると「洗ったんは西田や西田!」と怒った。
「あはは…はーおっかし…」
「なんやねん、ほんまに」
真島は不貞腐れたような顔をするが、柚葵はそれでも満足だった。
こんな風に笑い合えることなんてないと思っていたのだ。
会ったらきっと文句を言ってやろう、そう決めていた。
泣いてしまうかも知れない、そう思っていた。
けれどいざ真島を目の前にして気まずい雰囲気は一つもない。
「そない笑っとる柚葵を見るんは、久しぶりやな」
真島の言葉に柚葵は頷いた。
「…本当に」
真島と出会ってからの自分の感情は、とにかく忙しかった。
泣いたり笑ったり、また泣いたり。
辛いことの方が多かった気がするのに、どうしてこんなにあっさり許せてしまうのだろう。
「柚葵」
真島に名前を呼ばれて、その目を見つめる。
ドキリ、とするくらい真剣な眼差しで見つめられて胸が高鳴った。
「柚葵、好きやで」
そんな真っすぐな告白をされると思っていなくて、顔が熱くなるのを感じた。
「わしは極道や。傷つけることも危ない目に遭わせてしまうこともあるかも知れん。
せやけどもう、隠せないくらい柚葵が好きや」
夢だったら、どうしようと思った。
これがもし夢だったら、私はもう立ち直れないかも知れない。
「ここに来るまでに散々遠回りしたんは、覚悟ができていなかったからや。
…柚葵、極道と生きるっちゅうんは、生半可な気持ちやできへん。
お前に、その覚悟はあるんか?」
色素の薄い瞳に見つめられた。
片目しか見えていないはずなのに、頭の中を見透かされているような気さえしてくる。
「…難しいことはわからないです。
極道の規則もルールも、私は知りません」
でも…と思う。
「それでも真島さんといたいです。
…私も真島さんが好きです。それだけじゃ…だめですか?」
「少しずつ知っていったらええ」
そう言って真島さんが両手を広げる。
「おいで」と言われる前に、気付けば柚葵は走り出していた。
この手にもう一度抱きしめられたいとずっとそう願っていた。
頭の後ろに手が添えられて、そのまま唇が降ってくる。
軽く触れられるようなキスをされて思わず「もう一回」と口に出していた。
「…あかんて」
真島さんはそう言うのに、気付けば貪るように唇を求めてくる。
夢ならば覚めないでと何度も願った。
「わしはこのままここでおっぱじめてもええんやけど…どうする?」
テーブルにそっと押し倒されるが「だめです」と柚葵が笑った。
背後から聞こえた声に柚葵は目を瞑る。
明日になったら諦めよう。
そう思ったのに、見計らったみたいに男はやってくる。
平気で心を乱して、振り回す。
それでも怒れないのはどうしてだろう。
「こないだはうちの若いもんが世話になったなぁ」
真島の言葉にそっと振り返る。
言いたいことはたくさんあったはずなのに、男の手にある見覚えのある風呂敷に目が行った。
カツンカツンと足音を立てて、真島がカウンターに近付いてくる。
丁寧に包まれたそれを付け台に置くと「返しに来たんや」と男は笑った。
下唇を噛み締めたまま、柚葵は包みを受け取った。
暫く会っていないはずなのに、キスをしたのがついこの間のような気がして全身が熱くなる。
何か言わなくちゃと思うのに気まずくて何も言えない。
仕方なく風呂敷を広げた。
「……あは…あはははは」
突然笑い出した柚葵を真島がギョッとした顔で見る。
「な…なんや」
「あはははは!だって!」
ヒィヒィと笑いながらタッパーを指差す柚葵を真島はまだ不思議そうに見ていた。
「だって…こんな…綺麗に洗われて…」
風呂敷の中に丁寧に包まれたタッパーは綺麗に洗われ、しっかりと拭きあげられていた。
ヤクザの組長というイメージとあまりにかけ離れたそれに柚葵の笑いは止まらない。
「そ…そらそうやろ…洗わんで返す奴がおるかいな」
「だって…これ…真島さんが洗ったんですか?」
素肌に派手柄のジャケットを羽織るような男に似つかわしくない細やかさのギャップがすごい。
真島はカッと顔を赤くすると「洗ったんは西田や西田!」と怒った。
「あはは…はーおっかし…」
「なんやねん、ほんまに」
真島は不貞腐れたような顔をするが、柚葵はそれでも満足だった。
こんな風に笑い合えることなんてないと思っていたのだ。
会ったらきっと文句を言ってやろう、そう決めていた。
泣いてしまうかも知れない、そう思っていた。
けれどいざ真島を目の前にして気まずい雰囲気は一つもない。
「そない笑っとる柚葵を見るんは、久しぶりやな」
真島の言葉に柚葵は頷いた。
「…本当に」
真島と出会ってからの自分の感情は、とにかく忙しかった。
泣いたり笑ったり、また泣いたり。
辛いことの方が多かった気がするのに、どうしてこんなにあっさり許せてしまうのだろう。
「柚葵」
真島に名前を呼ばれて、その目を見つめる。
ドキリ、とするくらい真剣な眼差しで見つめられて胸が高鳴った。
「柚葵、好きやで」
そんな真っすぐな告白をされると思っていなくて、顔が熱くなるのを感じた。
「わしは極道や。傷つけることも危ない目に遭わせてしまうこともあるかも知れん。
せやけどもう、隠せないくらい柚葵が好きや」
夢だったら、どうしようと思った。
これがもし夢だったら、私はもう立ち直れないかも知れない。
「ここに来るまでに散々遠回りしたんは、覚悟ができていなかったからや。
…柚葵、極道と生きるっちゅうんは、生半可な気持ちやできへん。
お前に、その覚悟はあるんか?」
色素の薄い瞳に見つめられた。
片目しか見えていないはずなのに、頭の中を見透かされているような気さえしてくる。
「…難しいことはわからないです。
極道の規則もルールも、私は知りません」
でも…と思う。
「それでも真島さんといたいです。
…私も真島さんが好きです。それだけじゃ…だめですか?」
「少しずつ知っていったらええ」
そう言って真島さんが両手を広げる。
「おいで」と言われる前に、気付けば柚葵は走り出していた。
この手にもう一度抱きしめられたいとずっとそう願っていた。
頭の後ろに手が添えられて、そのまま唇が降ってくる。
軽く触れられるようなキスをされて思わず「もう一回」と口に出していた。
「…あかんて」
真島さんはそう言うのに、気付けば貪るように唇を求めてくる。
夢ならば覚めないでと何度も願った。
「わしはこのままここでおっぱじめてもええんやけど…どうする?」
テーブルにそっと押し倒されるが「だめです」と柚葵が笑った。