せっかく冷蔵庫の中が空っぽになったのに…と思った。

先週の定休日、たまたま西田が来てくれてここにあった常備菜的なものを全て片付けてくれた。
それなのにまた冷蔵庫の中には食べられることのないおかずがびっしりと並んでいる。

一度ついてしまった習慣とは恐ろしいもので、特定の時間になったらソワソワしてしまう。
まさかとは思うのに気が付いたらフライパンを振っていたりして、
まるでこれじゃパブロフの犬みたいと自分を嘲笑った。



犬じゃなかったら麻薬かな…



そんな縁起でもないことを考える。


気付けば閉店してからもう一時間が経とうとしていた。
勇人も帰ってしまたたし、良い時間だった。
真っすぐ帰ろうか、と思うのに性懲りもなく「あと一日だけ」とも考えてしまう。


今日だけ、今日一日だけ何か作ろう
今日で最後にするから


冷蔵庫の中にだって食べきれないほどの料理が詰まっているのに、どうしてこんなに諦めが悪いんだろう。
自分の諦めの悪さに嫌気が差した時だった。


背後で扉の開く音がする。


心臓が飛び跳ね、体温が上がっていくのを感じた。


うそ…まさか…


前もこんなことがあったなと思い出す。
勇人が帰ったことを見計らったみたいに、あの人はやってきた。
振り返る勇気もないまま体を固くする。