あなた...小さなレストランの若きオーナー
逃避と覚悟
空欄の場合は"柚葵"になります
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親父にバットで殺されかけた俺は、椅子に縛られたまま洗いざらい白状した。
仕事中に競馬をしていたことまでゲロってしまい、兄貴分に思いきり殴られる。
鼻血を出しながら何度も「すんません」と言った。
「簡単な見張りもできんのか。お前、どんだけ馬鹿なんや!」
もう一度兄貴分に殴られ、「すんません」とまた言った。
自分が情けなくてどうしようもなかった。
「見張れとは言うたけど、女と仲良うなれとは言うてへんのやで」
親父の鋭い眼光が俺を刺す。
さっきのでちょっとちびったのに、また出そうになった。
「すんません!そんな気ぃなかったんです!ほんとです!」
もうほとんど絶叫だった。
親父の恐ろしさは間近で見てきたつもりだったが、それを自分に向けられる日が来るとは思っていなかった。
「捨てちまうのは勿体ないからって言われて、断れなかったんです!
おふくろがいない俺にとっては柚葵さんの飯はおふくろの味みたいなもんなんです!」
自分でも何を言っているのか訳が分からなかった。
俺の言葉に親父が髪の毛を思いきり掴む。
「…誰が名前で呼んでええて言うた?」
「…すんません…すんません…」
余計な所で火を付けてしまい、横にいた兄貴分が「アホや」と呟いた。
「ね…姐さんが捨てちまうのは勿体ないって…
俺、断れなくて……ほ…本当は……親父の為に作ったもんだってわかってたんです」
「それを俺が食べてすんません!」とまた絶叫する。
途端に「怒ってんのはそことちゃうやろ!」と兄貴がまた俺を殴った。
「姐さん、毎日親父が来るかもって…馬鹿みたいに飯作って待ってたんです!
それを捨てられないって言われて、俺、断れなくて!
姐さん、寂しそうな顔してました!
本当は親父に食べて欲しいんだと思います!!」
「アホ!お前少し黙れや!」
兄貴が俺の口を塞ぐ。
それから「ほんまに殺されるぞ、アホ」と小声で囁かれた。
「…もう離したれ」
親父の言葉に兄貴が「え」と間抜けな声を出した。
「もう離したれや」
「…は、はい」
手足が自由になる感触がして、俺は椅子から崩れ落ちた。
安堵感から涙が零れる。
「口ん中、切れてないな?」
親父に頭を掴まれる。
「口ん中、切れてないよなぁ?」
「は…はいぃ…」
質問の意図が掴めないまま返事をする。
もうどこが地雷か俺の頭では分からなかった。
「飯、残さず食うたれよ」
親父はそれだけ言うと、自室に入っていった。
後に残されたのは半裸で小便を軽くちびった鼻血まみれの俺と、狐につままれた顔の兄貴だけだった。
「…おまえ、アホやろ、ほんまに」
兄貴が俺の腕を掴み、抱え起こしてくれる。
「俺はお前が親父に殺されると思ったわ」
訳が分からず椅子に座り直された俺は「…すんません」と兄貴の腕にすがって泣いた。
「汚いやろが、ボケ!いいからはよ飯食うぞ」
俺の頭を叩いた兄貴が柚葵さんの作った握り飯に手を付ける。
「これ残さず食わな、親父に殺されるで」
「…え…」
ニヤニヤとしながら飯を頬張る兄貴を不思議な気持ちで眺めながら、俺は首を傾げた。
この人は俺より賢い人だから、親父が怒った理由も許してくれた理由も分かるのかも知れなかった。
「なぁ西田、お前生粋のアホや。
けど、まぁ、今回は親父もちょっと効いたセリフやったなぁ」
クククと笑われるが、ますます意味が分からない。
とりあえず食えと差し出された煮つけを食べる。
食欲なんかとうになくなっていたと思ったが、美味かった。
生きてるって素晴らしいなと心の底から思う。
仕事中に競馬をしていたことまでゲロってしまい、兄貴分に思いきり殴られる。
鼻血を出しながら何度も「すんません」と言った。
「簡単な見張りもできんのか。お前、どんだけ馬鹿なんや!」
もう一度兄貴分に殴られ、「すんません」とまた言った。
自分が情けなくてどうしようもなかった。
「見張れとは言うたけど、女と仲良うなれとは言うてへんのやで」
親父の鋭い眼光が俺を刺す。
さっきのでちょっとちびったのに、また出そうになった。
「すんません!そんな気ぃなかったんです!ほんとです!」
もうほとんど絶叫だった。
親父の恐ろしさは間近で見てきたつもりだったが、それを自分に向けられる日が来るとは思っていなかった。
「捨てちまうのは勿体ないからって言われて、断れなかったんです!
おふくろがいない俺にとっては柚葵さんの飯はおふくろの味みたいなもんなんです!」
自分でも何を言っているのか訳が分からなかった。
俺の言葉に親父が髪の毛を思いきり掴む。
「…誰が名前で呼んでええて言うた?」
「…すんません…すんません…」
余計な所で火を付けてしまい、横にいた兄貴分が「アホや」と呟いた。
「ね…姐さんが捨てちまうのは勿体ないって…
俺、断れなくて……ほ…本当は……親父の為に作ったもんだってわかってたんです」
「それを俺が食べてすんません!」とまた絶叫する。
途端に「怒ってんのはそことちゃうやろ!」と兄貴がまた俺を殴った。
「姐さん、毎日親父が来るかもって…馬鹿みたいに飯作って待ってたんです!
それを捨てられないって言われて、俺、断れなくて!
姐さん、寂しそうな顔してました!
本当は親父に食べて欲しいんだと思います!!」
「アホ!お前少し黙れや!」
兄貴が俺の口を塞ぐ。
それから「ほんまに殺されるぞ、アホ」と小声で囁かれた。
「…もう離したれ」
親父の言葉に兄貴が「え」と間抜けな声を出した。
「もう離したれや」
「…は、はい」
手足が自由になる感触がして、俺は椅子から崩れ落ちた。
安堵感から涙が零れる。
「口ん中、切れてないな?」
親父に頭を掴まれる。
「口ん中、切れてないよなぁ?」
「は…はいぃ…」
質問の意図が掴めないまま返事をする。
もうどこが地雷か俺の頭では分からなかった。
「飯、残さず食うたれよ」
親父はそれだけ言うと、自室に入っていった。
後に残されたのは半裸で小便を軽くちびった鼻血まみれの俺と、狐につままれた顔の兄貴だけだった。
「…おまえ、アホやろ、ほんまに」
兄貴が俺の腕を掴み、抱え起こしてくれる。
「俺はお前が親父に殺されると思ったわ」
訳が分からず椅子に座り直された俺は「…すんません」と兄貴の腕にすがって泣いた。
「汚いやろが、ボケ!いいからはよ飯食うぞ」
俺の頭を叩いた兄貴が柚葵さんの作った握り飯に手を付ける。
「これ残さず食わな、親父に殺されるで」
「…え…」
ニヤニヤとしながら飯を頬張る兄貴を不思議な気持ちで眺めながら、俺は首を傾げた。
この人は俺より賢い人だから、親父が怒った理由も許してくれた理由も分かるのかも知れなかった。
「なぁ西田、お前生粋のアホや。
けど、まぁ、今回は親父もちょっと効いたセリフやったなぁ」
クククと笑われるが、ますます意味が分からない。
とりあえず食えと差し出された煮つけを食べる。
食欲なんかとうになくなっていたと思ったが、美味かった。
生きてるって素晴らしいなと心の底から思う。