あなた...小さなレストランの若きオーナー
交差点
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「いらっしゃいませ!」
GRANDの店内に元気な声が木霊する。
「勇人、この皿5番にお願い」
週末の店内は満席に近い状態だった。
二人で店を回すにはギリギリとも言える忙しさだが、それが今は有難い。
「10番のオーダー、あと何分かかる?」
目まぐるしく調理をこなしながら、勇人を見やる。
「んー…あと5分以内で!お急ぎ?」
「あ、いや。時間かかるなら先に伝えようと思って」
「大丈夫だよ。ありがとう」
笑顔でそう言った柚葵の顔を、勇人がまじまじと見ていた。
「なに?忙しいんだから、ちゃっちゃと動く!」
幼い頃から共に過ごしてきた勇人からすれば、柚葵のそれが
空元気であることに気が付いているはずだった。
けれど今は何も言わないで欲しいと思う。
自分の感情に蓋をして、空いてしまった穴を仕事で埋める。
今の柚葵にとってはそれ以外の選択肢が見当たらなかった。
「今日も一日、忙しかったねー」
目まぐるしい営業が終わり、柚葵が背伸びする。
「お客様も増えてきたし、こんなに順調に行くなんて嘘みたい。
これも勇人のお陰かな!ありがとうね」
手際良く洗い物を片付けていく。
この後は売上帳簿を付けて、明日の仕込みも少しして帰ろうか。
家に帰ってからはただ泥のように眠りたかった。
「あのさ、柚葵」
ホールを片付ける勇人の視線を交わすように「んー」と返事した。
今は目を見て話しをしたくない。
「お前、最近無理しすぎなんじゃねーの」
「そうかな。別に平気だよ」
お店を始めるとき奮発して買ったんだっけ
勇人の言葉に意識を向けないよう、お気に入りの皿に目を向ける。
魚料理を盛り付けるときに映えて、便利なのだ。
ソースの汚れをスポンジで丁寧に落としていく。
「あいつのせいだろ。あの真島ってヤクザ」
もう少しお皿の数を増やそうか。
皿も料理の一部とはよく言ったものだ。
明日早起きして見に行ってみよう。
「俺、言ったよな。お前遊ばれてたんだよ」
…グラスは今の数で足りるだろうか。
お酒の種類は?
思い切って製氷機を買ってしまおうか。
「いつまでもこんなの貼ってるから悪ぃんだろ!」
勇人は大声でそういうとレジ横の黒い名刺に手をかけた。
画鋲でただ止められていたそれは、簡単に外れてしまう。
「やめて!」
柚葵が声を荒げると同時、手から一枚の皿が滑り落ちる。
ガシャン!という音が店内に響き、足元に陶器の破片が散らばった。
「…こんな奴のせいで、柚葵が辛い顔してるの、俺はずっと見てなきゃいけないわけ?」
そう言うと勇人は手に取った真島の名刺をぐちゃぐちゃと丸め、カウンターに放った。
「ホールの片付けは終わってる。…遅くなるならタクシーで帰れよ」
店を後にする背中に声をかけることなく、柚葵は足元の破片に目をやった。
大事な物が壊れていく気がするのは、自分のせいか、それとも…
あんなに焦がれていた神室町が、今の自分にとっては息苦しい。
破片を拾おうと柚葵が屈んだ時、扉の開く音が聞こえた気がした。
まさか…と思う。
「…邪魔するで」
それは一番聞きたくて、聞きたくない声だった。
GRANDの店内に元気な声が木霊する。
「勇人、この皿5番にお願い」
週末の店内は満席に近い状態だった。
二人で店を回すにはギリギリとも言える忙しさだが、それが今は有難い。
「10番のオーダー、あと何分かかる?」
目まぐるしく調理をこなしながら、勇人を見やる。
「んー…あと5分以内で!お急ぎ?」
「あ、いや。時間かかるなら先に伝えようと思って」
「大丈夫だよ。ありがとう」
笑顔でそう言った柚葵の顔を、勇人がまじまじと見ていた。
「なに?忙しいんだから、ちゃっちゃと動く!」
幼い頃から共に過ごしてきた勇人からすれば、柚葵のそれが
空元気であることに気が付いているはずだった。
けれど今は何も言わないで欲しいと思う。
自分の感情に蓋をして、空いてしまった穴を仕事で埋める。
今の柚葵にとってはそれ以外の選択肢が見当たらなかった。
「今日も一日、忙しかったねー」
目まぐるしい営業が終わり、柚葵が背伸びする。
「お客様も増えてきたし、こんなに順調に行くなんて嘘みたい。
これも勇人のお陰かな!ありがとうね」
手際良く洗い物を片付けていく。
この後は売上帳簿を付けて、明日の仕込みも少しして帰ろうか。
家に帰ってからはただ泥のように眠りたかった。
「あのさ、柚葵」
ホールを片付ける勇人の視線を交わすように「んー」と返事した。
今は目を見て話しをしたくない。
「お前、最近無理しすぎなんじゃねーの」
「そうかな。別に平気だよ」
お店を始めるとき奮発して買ったんだっけ
勇人の言葉に意識を向けないよう、お気に入りの皿に目を向ける。
魚料理を盛り付けるときに映えて、便利なのだ。
ソースの汚れをスポンジで丁寧に落としていく。
「あいつのせいだろ。あの真島ってヤクザ」
もう少しお皿の数を増やそうか。
皿も料理の一部とはよく言ったものだ。
明日早起きして見に行ってみよう。
「俺、言ったよな。お前遊ばれてたんだよ」
…グラスは今の数で足りるだろうか。
お酒の種類は?
思い切って製氷機を買ってしまおうか。
「いつまでもこんなの貼ってるから悪ぃんだろ!」
勇人は大声でそういうとレジ横の黒い名刺に手をかけた。
画鋲でただ止められていたそれは、簡単に外れてしまう。
「やめて!」
柚葵が声を荒げると同時、手から一枚の皿が滑り落ちる。
ガシャン!という音が店内に響き、足元に陶器の破片が散らばった。
「…こんな奴のせいで、柚葵が辛い顔してるの、俺はずっと見てなきゃいけないわけ?」
そう言うと勇人は手に取った真島の名刺をぐちゃぐちゃと丸め、カウンターに放った。
「ホールの片付けは終わってる。…遅くなるならタクシーで帰れよ」
店を後にする背中に声をかけることなく、柚葵は足元の破片に目をやった。
大事な物が壊れていく気がするのは、自分のせいか、それとも…
あんなに焦がれていた神室町が、今の自分にとっては息苦しい。
破片を拾おうと柚葵が屈んだ時、扉の開く音が聞こえた気がした。
まさか…と思う。
「…邪魔するで」
それは一番聞きたくて、聞きたくない声だった。