あなた...小さなレストランの若きオーナー
交差点
空欄の場合は"柚葵"になります
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あの日、キスをされるかも知れないと思った。
キスをされてもいいと思った。
仕込みをする手が止まる。
あの時、キスをしていたら今頃どんな気持ちでいたのだろう。
あの夜からもうすぐ一か月が経とうとしていた。
真島が姿を現すこともなく、連絡もない。
そもそも連絡先すら知らない。
ただ弄ばれただけ、そう自分に言い聞かせようとしても柚葵にはどうしてもそう思えなかった。
真島さんがそんな人だと思いたくない
ガチャ
店のドアが開く音に、ハッと顔を上げた。
「...開店まで、あと30分だけど間に合うの?」
そこには不機嫌な勇人が立っていて、
思わず顔が熱くなった。
きっと今自分は期待を込めた顔をしていただろう。
勇人の姿を見て、落胆したように見えたかも知れない。
「...おはよう。今から急げば大丈夫」
柚葵は何も悟られないように、仕込に集中した。
「さっきから誰か待ってるの?」
「...え...?」
カウンター越しに声を掛けられ、動きが止まる。
すっかり常連になったキャバクラ嬢の春香が、上機嫌でこちらを見ていた。
「だって柚葵ちゃん
ドアが開くたびソワソワしてる。
もしかして恋してるの?」
ニヤニヤしながらそう問われ、思わず「違いますよ」と即答する。
「ソワソワしてるつもりは、ないんですけどね」
何か話題を変えなくてはと思うが、何も思いつかない。
頭の中を見透かされてるみたいで恥ずかしくなる。
「そういえば...最近真島さんお見えになりました?」
瞬間、自分から話題を振ってしまい後悔するが、春香は何も気にしない風に「うん」と頷いた。
「前に比べて良く遊んでるみたい。
うちの系列のお店に"お気に"がいるから、
毎日のように通ってるって。
うちにはたまにかなー。
あの人太いから、羨ましいよー」
春香は「私も売上稼ぎたーい」と笑い、「おかわりー」と勇人に手を振る。
柚葵はそうか、と思った。
忙しいとか、怪我をしているとか
そういうことじゃない
私に会いたくない、それだけ
そうか...そうなんだ
「...新作のデザートありますけど、
春香さんちょっと味見しません?」
笑顔を作るが、思ったようにできているかわからない。
柚葵は精一杯気にしないふりをして、1日をやり過ごした。
突きつけられた真実は重く、それでいて現実味がない。
子供の頃自分は「危ないから行ってはいけません」という場所に進んで行く子ではなかった。
赤信号を渡ったりもしない。
人一倍慎重だった気がする。
少しだけ道を間違えただけ、と言い聞かせる。
引き換えせばまだ間に合う。
母親と同じ過ちを繰り返すわけにいかないのだ。
「ありがとうございます。
またお待ちしております」
最後の客を見送った後はもうどうやって帰路についたのか、覚えていなかった。
キスをされてもいいと思った。
仕込みをする手が止まる。
あの時、キスをしていたら今頃どんな気持ちでいたのだろう。
あの夜からもうすぐ一か月が経とうとしていた。
真島が姿を現すこともなく、連絡もない。
そもそも連絡先すら知らない。
ただ弄ばれただけ、そう自分に言い聞かせようとしても柚葵にはどうしてもそう思えなかった。
真島さんがそんな人だと思いたくない
ガチャ
店のドアが開く音に、ハッと顔を上げた。
「...開店まで、あと30分だけど間に合うの?」
そこには不機嫌な勇人が立っていて、
思わず顔が熱くなった。
きっと今自分は期待を込めた顔をしていただろう。
勇人の姿を見て、落胆したように見えたかも知れない。
「...おはよう。今から急げば大丈夫」
柚葵は何も悟られないように、仕込に集中した。
「さっきから誰か待ってるの?」
「...え...?」
カウンター越しに声を掛けられ、動きが止まる。
すっかり常連になったキャバクラ嬢の春香が、上機嫌でこちらを見ていた。
「だって柚葵ちゃん
ドアが開くたびソワソワしてる。
もしかして恋してるの?」
ニヤニヤしながらそう問われ、思わず「違いますよ」と即答する。
「ソワソワしてるつもりは、ないんですけどね」
何か話題を変えなくてはと思うが、何も思いつかない。
頭の中を見透かされてるみたいで恥ずかしくなる。
「そういえば...最近真島さんお見えになりました?」
瞬間、自分から話題を振ってしまい後悔するが、春香は何も気にしない風に「うん」と頷いた。
「前に比べて良く遊んでるみたい。
うちの系列のお店に"お気に"がいるから、
毎日のように通ってるって。
うちにはたまにかなー。
あの人太いから、羨ましいよー」
春香は「私も売上稼ぎたーい」と笑い、「おかわりー」と勇人に手を振る。
柚葵はそうか、と思った。
忙しいとか、怪我をしているとか
そういうことじゃない
私に会いたくない、それだけ
そうか...そうなんだ
「...新作のデザートありますけど、
春香さんちょっと味見しません?」
笑顔を作るが、思ったようにできているかわからない。
柚葵は精一杯気にしないふりをして、1日をやり過ごした。
突きつけられた真実は重く、それでいて現実味がない。
子供の頃自分は「危ないから行ってはいけません」という場所に進んで行く子ではなかった。
赤信号を渡ったりもしない。
人一倍慎重だった気がする。
少しだけ道を間違えただけ、と言い聞かせる。
引き換えせばまだ間に合う。
母親と同じ過ちを繰り返すわけにいかないのだ。
「ありがとうございます。
またお待ちしております」
最後の客を見送った後はもうどうやって帰路についたのか、覚えていなかった。