あなた...小さなレストランの若きオーナー
揺れる思い
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「柚葵、ちゃんと説明しろよ」
真島を追いかけ店を出て行った柚葵が戻った後は、勇人からの質問攻めが待っていた。
仕方なく真島との出会いからをかいつまんで話す。
勇人は相当怒っているのか酷い剣幕だった。
「お前、相手が誰かちゃんとわかってんの?東城会って言ったら
関東最大の暴力団組織だぞ」
「そうなの?」
柚葵の間の抜けた返答に勇人は絶句する。
「俺、だから嫌だったんだよ。柚葵は世間知らずすぎる。
そんな奴が神室町で商売やるなんて、全力で止めるべきだった。
しかもよりによって真島吾朗なんて、怖いもの知らずにもほどがあるだろ!」
勇人の口から説明される内容は、中学を出てから料理の修行で全国を回っていた柚葵にとって
根耳に水のことばかりだった。
東城会がいかに非道で残忍な組織の集まりなのか、真島吾朗と言えば「狂犬」と呼ばれ
神室町どころか日本全国にも名が知れ渡っている極悪非道の男だということ…
でもどの話を聞かされても、今の柚葵にはピンとこなかった。
「…そうなんだ」
心ここにあらず、といった様子で相槌を打つ柚葵の態度が勇人の怒りに更に火を付けた。
「ヤクザがどういう人間か、忘れたわけじゃないだろ!
お前も俺も、どれだけの目に遭わされたのか忘れたのかよ!」
「私は…」
“覚えてないから”という言葉を飲み込み、「そうだね」と同意した。
「私はともかく、勇人はそれで辛い思いをしたんだもんね。
私、考えなしだった」
「柚葵もだろ!」
勇人は手にしていた箒を床に投げつける。
「二度とあいつと関わるなよ!もし次来たら、俺が警察を呼んでやる。
どうせ叩いたらホコリしか出ないやつなんだから」
そう言うと上着を羽織り「今日はもう上がる」と言って店を出て行ってしまった。
後に残された柚葵は「はぁ」と大きな溜息を吐いた。
勇人はああ言っていたものの、真島とはまた会う約束をしてしまった。
勇人は怒るかも知れないけど、私にはそんなに悪い人には見えないんだよ
美味しそうに料理を食べて笑ってくれる。
あんな顔されたら邪険になんかできるわけがない。
今日だって来てくれなかったら、この店は来月には無くなっていただろう。
それに…と柚葵は思う。
手を握られても嫌じゃなかった
また会いたいと思った
「私、やっぱりお母さんに似てるのかな」
柚葵は会ったこともない母を思って自嘲した。