pkmn短編夢
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「眠れないのか?」
そう声をかけられ、蒼依は振り返った。
ここは月の光が届かない海底、声の主が棲まう目覚めの祠。時間の概念を感じさせない黒と青の世界。
「うん、目が冴えちゃってて」
普段から規則正しい生活をしている蒼依は時間が経つとそれなりに眠気がやってくるはずだった。しかし、今日はなぜか一向に眠気が襲ってこない。仕方なく起き出し少しぼんやりしていたのだが、腕から愛する者が居なくなっていることに気付いた海の覇者はわざわざ迎えにきたらしい。
「追いかけてきてくれたの?」
「当たり前だ。我が愛がわざわざ我に逢いにきてくれているというのに、なぜ独り身で眠らねばならぬのだ」
眉を潜め、少しいじけたように言う夫に、蒼依は小さく笑って近寄った。
「何がおかしい」
「ふふ、ごめん。旦那様が可愛くて、つい」
「我を可愛いなどと評すのは世界中探しても我が愛だけであろうな」
「えー、そうかなぁ」
ほら、と促され、カイオーガの背中に乗せられる。
広く逞しいその背には、大小の古傷が無数に刻まれていた。古から幾度も行われてきた陸の創手や空の主人との戦いの中でついた、長い時をかけて癒してもなお残る傷痕。
そのうちのいくつかに指を滑らせ、そっと唇を落とすと、背がぴくっと動いた。
「我が愛、そういじらしいことをするな」
「えー?私の旦那様の背中がかっこ良すぎるのが悪い」
だから自分のせいではなく不可抗力だ、と言う蒼依はわかっていないのだろう。その行為で、彼女がどれだけ己を想っているか伝わるということを。
しかし、行動で如実に表されているといえど、言葉にして言ってもらいたいという欲もあり、カイオーガは少し意地悪な問いかけをした。
「かっこいい、のは背中だけか?」
「…その聞き方はずるい」
いつのまに寝床に戻ってきたのか、そっと褥に降ろされ、海王の手に囚われた。
眠気もようやくやってきたようで、蒼依は包まれているその手に頬を寄せつつ瞼を下ろした。
貴方を愛しているから
その傷ですらも、愛おしいのです。誰よりも格好良い貴方。
その言葉を口にしたのは、果たして夢か、それとも。
真相は、海の覇者だけが知っている。
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