私を知らない君
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「あのね……」
そう言いかけてハッとする。
本人に言ってどうする。なんなら私と付き合ってない本人に。
そう思いとどまって、私が口をパクパクさせていると、純ちゃんはいいよ、無理しなくてと言ってくれた。
「ごめんな、聞き出そうとして。思い詰めた顔してたからさ、真壁さん、ほんとにいなくなっちゃいそうで。」
「!!」
「どんなに辛いことがあったかは分からないし、真壁さんと同じ目に会ったことないクセに!って思われるかも知れないけど、居なくなるって言うのは絶対だめ、な?こんなところにこんな時間まで女の子一人で危ないし、ここ山道だから足滑らしたりしてもたまんねえし。」
「……ごめんなさい。」
私が謝ると、自主練をしてたらしい純ちゃんは、今日は切り上げて私を送ると言い出した。
私が遠慮すると、俺がそうしたいからさせて欲しい、と優しい笑顔を見せてくれた。
自転車部の部室の前、純ちゃんは着替えるから少し待ってて、と部室へ入っていった。
このまま優しい純ちゃんと一緒にいられるのなら、この世界にいたままでもいいかもしれない。元の世界に戻って、純ちゃんが別の人を選んだ事実を突きつけられる方が辛い。
「お待たせ!帰ろっか?」
「うん」
そういえば純ちゃんの家は私の家と逆方向だったっけ。それなのに送ってくれるなんて…。
思えば純ちゃんは、私が高校生の頃何回か家まで送ってくれたことがあった。私が委員会で遅くなって、純ちゃんの部活が終わる時間と被ると、決まって家まで送ってくれていたっけ。
付き合ったのは大学生になってからなのに、高校の時から仲が良くて、純ちゃんと話す何気ない会話が楽しくて……。
そういえば、私に告白した時、純ちゃんはずっと好きだったと言っていた。私の事、高校生の頃から好きだったのだろうか。いつから私を好きでいてくれたのだろうか。
「なあ、また今度一緒に帰ろうよ。」
ひとりで考え事をしていると、不意に純ちゃんがそう言った。
「え、いいの?」
「逆にいいの?は俺のセリフだよ。部活がない日……ていうか、俺が自主練したりしてない日になっちゃうんだけどさ。」
「一緒に帰りたい!」
「ほんと?よかった。じゃあまた一緒に帰ろう。」
「うん!」
私の家に到着し、純ちゃんにお礼を言って手を振る。するとそれに彼も手を振り返してくれた。
私はなんだか懐かしい気になった。