私を知らない君
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始業式も終わって、午前中で帰れるので、私は帰る支度を始めた。
結局あの後、純ちゃんと話せる機会はなかった。純ちゃんは部活あるし、後に自転車競技部の部長になる人だし。でも、もう少し話したかったのが本音ではある。
「手嶋くん、また明日ね」
「真壁さん、今日は事故に遭わないように気をつけて帰ってな?また明日!」
私がさよならの声をかけると、純ちゃんも手を振ってくれた。私を気遣う言葉にきゅん、と胸が締め付けられる。
やっぱり私は、どんな時代にいても、どうしてても純ちゃんのことが大好きなんだ。
ちょっと嬉しかった。けど、それと同時に、『私を好きじゃない純ちゃん』を知って、悲しくなった。
まだ私のことを好きじゃない過去の純ちゃん。
未来に戻っても私のことなんかもう好きじゃない純ちゃん。
私ばっかり好きで、やっぱりどうしようもない。
気づいたら涙が溢れてきて、私は泣きながら学校の近くを歩いた。泣いてると恥ずかしいので、バレないように人気(ひとけ)の無い道を選んだ。
泣いたって仕方がないことだけど、悲しい時はとことん泣くしかない。
こんな腫れた目で家に帰ったら家族に心配をかけると思い、お母さんには友達と遊んで帰るとメールをして、学校の近くで時間を潰した。
身が切り裂かれるほどに辛い。こんな思いはもう、したくない。
「こんなに辛いなら、あの時事故で死んじゃえば良かったな…」
何も私にとって純ちゃんが全てじゃない。わかっているけど、もう何もかもがどうでも良くなって、週末純ちゃんと過ごすのが楽しみで頑張っていた仕事や、純ちゃんのために可愛い彼女でいようって努力したりする気力がない。
近くにいすぎた。
同棲なんてするから。
純ちゃんがいない日々はきっと抜け殻みたいで、ぽっかりと胸に大きな穴が空いたようになるんだろうな……。
歩いている途中、小さな広場を見つけた。自販機があって、ベンチもある。休憩所なのかな。
落下防止にか、防護柵がしてあってその向こうは落ちたらひとたまりもなさそうな崖になってる。
ここから落ちたら楽になるんだろうか。
なんて、死ぬ勇気なんてないんだけど。
「真壁さん?」
呼ばれて振り返る。
「じゅ、んちゃん……」
そこに居たのは純ちゃん。
今一番会いたくなくて、一番大好きな人。
「何してるんだ?こんなところで……っ。もしかして、今、ひとりが良かった……?」
彼は駆け寄ってきてくれたけど、泣いている私に気づいて、気まずそうに視線を逸らした。
「ご、ごめん。気づかなくて、空気読めないよな……。」
「……ううん、私こそ、ごめんね……。」
泣いてる顔が恥ずかしいのと、この時代で出会ったばかりなのに、面倒な女だと思われるのも嫌で俯いた。
「座ろっか?」
「うん。」
純ちゃんは自転車に乗ってたみたいで、自転車部の人が着るジャージをきていた。
部活中だったかもしれないのに、申し訳ないな……。
はい、と純ちゃんが自販機で買ってきてくれたジュースをくれた。お礼を言って受け取ると、純ちゃんは私の隣に腰を下ろした。
「……昨日も泣いてたよね。純ちゃんって。」
「……うん。 」
「何かあったの?話したくないならいいけど、俺で良かったら話聞くよ」
そう言って私の事を見つめる彼の瞳に、私は縋ってしまいたくて、いたたまれなくなった。