私を知らない君
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「危ない!!!」
大きな叫び声と共に、体がグンっと後ろに引き戻される。
それと同時に目の前を大きなトラックが勢いよく通り過ぎていった。
助かった……?
「怪我ないか?ボッーとしてたみたいだけど大丈夫?」
聞き慣れた声がしてそちらを向くと、純ちゃんが私に手を差し伸べくれていた。でもなんか、いつもの純ちゃんじゃない……?
「純……ちゃん……?」
「えっ?」
安心と今更襲ってきた恐怖と純ちゃんの浮気疑惑問題と。
色々な感情がぐちゃぐちゃに混ざって、私の頬をつたう。
「あっ!ちょ!泣かないで!怖かったよな〜!びっくりしたよな!」
「うううっ、ううっ、」
慌てた純ちゃんは私にハンカチを差し出してくれた。優しくしないで欲しい反面、泣いている私を気遣う彼のやさしさがうれしくて、さっきまでのことを忘れそうになる。こんなに優しい人が浮気、だなんて。何かの間違いじゃないのだろうか。
「純太、泣かせた?」
すると、また誰かやってきて、純ちゃんに問いかける。
見覚えがある彼は、純ちゃんの親友。青八木一くんだった。
「ちがう!青八木!決して俺が泣かしたわけじゃねえよ!」
「うぅ、純ちゃん、ごめんなさいぃ、」
「純ちゃん、だって。やっぱり純太じゃないのか?」
私が泣いている理由を自分のせいだと言われた純ちゃんは、否定したが、青八木くんの言う通り、私は純ちゃんのせいで泣いている。
「今初めて会ったんだぞ?そんなわけないだろ!」
「!?」
私が泣いてるのは自分のせいだと分かってないと思ったら、次は私と初めて出会ったと言い出した。何を言ってるのだろう。
「そういえば、自己紹介してなかったな……。俺は総北高校の2年、手嶋純太だ。こっちの無口なのが青八木一。君もその制服、総北だろ?」
「え?制服……?」
急に自己紹介をする彼に言われて、私も純ちゃんも制服を着ていることに気づく。なかなか質問に対して答えない私に不思議そうな顔をする純ちゃんは、私のことをほんとに知らないようだ。
「あ、私、もうこれで!助けてくれてありがとう!」
これ以上、2人といると頭の中がこんがらがりそうなので、お礼だけ言って私はその場を離れた。
これは夢?
事故に遭いそうになって走馬灯を見てるのかもしれない。
いや、私と純ちゃんの出会いって、こんなだったっけ?いやいや、席替えで席が近くなって仲良くなったんだ……。付き合ったのはだいぶあとだけど。
携帯がバイブを鳴らして、ポケットに手を入れると、普段愛用しているスマホはそこにはなくて、高校の頃のガラケーが姿を現した。
メールはお母さんから。早く帰っておいで、とメッセージが届いている。
瞬間、ケータイの画面を見ていたせいで、石に躓いてころんだ。
痛い。膝を擦りむいている。
これは夢じゃないらしい。
「わ、私タイムスリップしちゃったの……?」
現実では考えられないほど不思議なことが起こって、さっきまでの悲しみだとかショックは、一瞬で吹き飛んでしまった。