私を知らない君
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「純ちゃん、もういいよ。別れよ?」
私から切り出した話なのに、涙がパタパタと頬を濡らして、私はたまらなくなってそのまま家を飛び出した。
付き合って3年、同棲して1年と半年。
あっけない終わりだった。
原因と言えば、彼氏の浮気……。いや、正確には浮気しているんじゃないかなって、私の推測に過ぎないのだけれど。
始まりは彼の帰りが遅くなったこと。
朝帰りはなかったものの、今まで定時で帰ってきていた彼が、夜遅くなるまで帰ってこない日々が度々あった。
そのうち、一緒にいる時もスマホばかり弄るようになり、ふーんとか、うん、とか適当な返事をされるようになった。
どこかに出かけよう!と誘っても断られることが多くなった。
それだけで?と思うかもしれないけれど、確固たる証拠は、彼がお風呂に入ってる時にたまたま見かけてしまった女の子からのメッセージの通知。
『今日はありがとう!また来てね!』
スマホの画面に映し出されたこの文を見て、これまでの彼の不審な点と全て繋がった気がした。
「純ちゃん、話があるんだけど」
「どした?優奏?」
風呂上がりの彼は、長いくせっ毛を後ろでひとつにたばね、こてん、と首を傾げて私の大好きな瞳で見つめてくる。
私は震える手でスマホを彼にスマホを渡す。
「これ、女の子だよね?」
「え、あっ……。」
クロだ。と思った。
珍しく彼が焦った顔をしたからだ。
「優奏、心配すんなよ。この子はなんでもないからさ。」
「……なんでもないわけないでしょ?また来てって。」
「浮気疑ってるの?」
「当たり前じゃん、こんなメッセージ……。」
彼は深いため息をつくと、頭をガシガシとかいた。
バレて開き直ったのだろうか。
「優奏、ほんとに浮気じゃない。信じてくれよ。」
「信じられないよ。……最近帰りも遅いし、私の話も上の空。デートの回数だって減った。私の事、もう飽きた……?」
「ちがう、それには理由があって、」
「理由ってなに?どんな?」
「っ、それは……」
言葉に詰まる彼。
こんなふうに傷つけられるんだったら、ハッキリしてもらった方がよっぽどいい。
「純ちゃん、もういいよ。別れよ?」
こんなに傷つくくらいなら、出会わなければよかった。
好きになんかならなきゃ良かった。
大の大人の私は泣きじゃくりながら、駆け出した。何も構ってなんかいられなかった。辛くて辛くてたまらなかった。1人になりたかった。
夢中で走っていると突然、けたたましい音が耳をつんざいた。音の正体を知ろうと、そちらに顔を向けると、スローモーションのようにトラックがクラクションを鳴らして、私目掛けて突っ込んでくる。
轢かれる。
そう思った時には遅くて、私はゆっくりと近づいてくる鉄の塊を待つことしか出来ない。
こんな時にでも思い浮かぶのは大好きな彼の顔。
純ちゃん、泣きそうな顔してた。
最後に本当に大好きだったと伝えればよかった。
「さようなら、純ちゃん。」
本人に届くはずもない声を最後に、私の視界は真っ暗に落ちた。
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