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6章

 夕方まで三人でマリオのゲームやなんかをやって過ごした。たまに裕子さんも誘って。
 そして夕飯の誘いに靡きそうになったが、母親も夕食の準備をはじめている頃合いだったし丁重にお断りした。
 決して和泉のお母さんや妹さんも加わるからってびびったわけじゃないぞ。

 そして現在、裕子さんの車で家まで送って貰っている。
 佐伯も一緒だ。和泉はまた一人家に残って夕飯の準備をしている。あいつはなんだかんだ働き者なのだ。
 行きとは違い、後部座席に二人で乗り込んでいた。

「今日は楽しかったねえ。やっぱり人が多いとわいわいできて楽しいよね」

 佐伯はご満悦だ。俺はあんまり人が多いと気疲れしてしまうのだが、佐伯は逆みたいだ。
 たしかに最近は二人きりになるのに必死で、四人で遊ぶということをしばらくまともにできていない気がするし、ああいう空気は久しぶりだった。
 また前のように、河合さんも連れて和泉が住んでるアパートにでも遊びに行くのもいいかもしれない。
 しかしそれでも俺は二人きりになれる時間は欲しいと思ってしまうのだが……裕子さんもいるし、言わないでおく。

「なあに~? チラチラ見て」
「えっあ、いやー別に?」

 そんなに見ているつもりはなかったのに、佐伯は笑った。
 今日は何度かこんな空気になっていた。
 佐伯と二人きりで話すのにはそろそろ慣れていたが、そうなるとみんなの前でどんな風に接していたのか思い出せなくなってしまったのだ。
 距離が近すぎるような気がするし、優しい喋り方をするのもなんだか周りに違和感を持たれそうな気がして気恥ずかしい。
 でもだからといって、特に好きとか考えていなかった頃のように適当に扱うことはもうできないのだ。俺の思っても見ないところで傷つけてしまうようで、そしてそうなったら佐伯はきっと直接文句なんて言わないだろうから、それは避けたい。
 ああやっぱり、隠しておくのってつらいな。まあ、実は付き合ってるんです! なんて打ち明けたからといって、公然とベタベタできるようなタイプだとも我ながら思わないけどさ。

「あ、あのね」

 佐伯が少しもじもじとしたような声を出した。そちらを見ると佐伯の目線は窓の向こうだ。

「もし、お邪魔になるようだったら、いいからね」
「えっ? 何が」
「クリスマスの話……」
「ああ」

 招待される側として心配するのは当然か。

「大丈夫大丈夫、うちの親佐伯のこと大好きだし」
「そ、そっかな……? こないだ変なとこ見せちゃったしな……」
「あ、あれは俺が悪いから……ちゃんと和解したし……佐伯が気にすることじゃないよ」

 佐伯に絡んでいるところを目撃されたのを気にしているらしい。まあ、あれはどうみても俺が悪いしな。母親も佐伯には何度も謝っていた。
 裕子さんは口を挟まずにこにこしながら運転していた。ちょっとだけ、この会話がどう思われているのか気になる。

 帰宅後、母親に佐伯を誘って良いかと訪ねると、まあ、まあと感嘆の声を上げて、父親の遺影になにやら報告しに言った。
 ほらな。やっぱり大歓迎なんだ。その旨を佐伯にメールすると。よかった。とだけ返ってきた。相変わらずメールだと淡泊だ。
 でもきっと、あの調子だと喜んでるんだろうな。変なやつだと思う。
 佐伯の表情を思い出して、俺もなんだかむず痒いような照れくさい気持ちになった。
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