6章
食事を終え、俺たちはなんとなく裕子さんに気を遣って二階へと上がった。裕子さんは仲間に加わりたそうな顔をしていたが、どうやら最近しっかりと休めていないらしい。和泉がそれを指摘するとおとなしく引き下がった。
「多分オレのこと心配して結構無理して帰ってきてるんだよ。おばさんは帰るの夜遅くなっちゃうことあるし、かおちゃんも部活忙しくてその間はオレが家で一人になることが結構あるから……」
なるほど。寂しくないようにこの家に招いたのに、放置になるようじゃ意味ないし。それに佐伯の状況を考えれば無理してでも帰宅しようという気持ちはわからなくはない。
「でもお姉ちゃんは大学もあるし、オレのこと気にしなくて良いのにな。ゲームとかしてればあっという間だし」
「ところでそのお姉ちゃんっていうのは一体……」
ずっと気になっていたことを指摘すると、佐伯は唇を尖らせた。出た。その名も照れ隠しのポーズだ。もう俺には通用しないぞ。
「友也、昔は姉ちゃんのことお姉ちゃんって呼んでたよな」
「そうだよ。大きくなってからは恥ずかしくて裕子さんって呼んでたけど、……いいでしょ! 別に!」
「お、怒らなくても……」
逆ギレ気味に佐伯はわめくとベッドの上にぽすんと座った。
まあ、男女として意識していたのが取っ払われたということなのだろうか……。
「つーかよぉ、お前、人の部屋使ってる自覚あるか? もうちょい掃除してくれよ……」
和泉は呆れて部屋を見回した。確かに、正直とっちらかった部屋だった。
物が片づけられていないというだけで、ゴミだとかはなさそうなので不衛生さはないが……。でも、まあ、綺麗では、絶対ない。
「え? あ。うう……ごめん……」
佐伯の認識としては汚い自覚がなかったのだろうか。
指摘されてようやく恥ずかしそうに、ベッドの上の本やクッションをまとめて移動させて座れるスペースを作って、ほら、ここ座れるよ、と言った。
そうじゃない。そうじゃないんだ。多分それでは和泉は納得しないと思うぞ。
かくして、佐伯の部屋の大掃除が急遽始まった。
これは一体どうしてこんな有様に? と逐一尋ねると、それはこういうときにこうするために~と弁解が入る。そして和泉は聞いておきながら無視して片付ける。これの繰り返しであった。佐伯はちょこちょこと抵抗しているが、正論で黙らされている。完全にお母さんと子供である。
その散らかり方はとにかく出しっぱなし、というタイプだった。
そもそも普段使わない物をしまって隠すということを美とする、そういう感覚がないのだろうか。
これはたしかに、ある程度は人の感覚によるだろう。完全にしまってしまえば取り出すときに手間だし、予め出しておけばすぐに取り出せるのは確かだ。まあ、その量が異常なんだが。これでなくし物をするならさっさと治せといえるんだが、それほど佐伯に粗忽者のイメージはないし。
しかしそう思えば意外と規則性があった。物が所狭しと並んではいるが、きちんと動線は確保されているのだ。無闇に積み重ねられてもいない。生活の邪魔にはなっていないのだろうと察しがつく散らかし方であった。あくまでも佐伯にとっては、だが。
最も和泉が発狂しそうになったのが本棚の並び順だ。巻数がどれもめちゃくちゃなのだ。一応シリーズものは固められていて感心したが、それは和泉が元々決めていた配置だそうだ。つまり漫画を読むときそのシリーズを丸ごと取り出して、読み終わったらそのまま戻したのだ。それなら巻数がめちゃくちゃになることはそうない気がする。読み終えた順に積み上げればいい話だからだ。
この法則性はどれだけ頭を捻っても導き出せそうになかったので観念して本人に聞くと……
「ああ、これはね、お気に入りで何回も読み返す巻があるでしょ? それは左から順番に並べるの。あとで探すの面倒じゃん?」
つまり勝手に自分に適したように工夫を凝らしていたのだ。和泉の本棚なのに。
「お前なあ! 順番通りに並べないと背表紙の絵が完成しないだろ!? 綺麗に並べてこそコレクションだろ!」
「え? 別にいいじゃん。それ一回見たことあるし。いくら棚が綺麗になっても中身読まきゃ意味ないじゃん。こっちのが楽だよ?」
「そういう問題じゃねえんだよ~! 作者がどんな思いでこの背表紙描いたかわかるか!?」
「多分締め切りのこと考えてたと思うよ」
二人が重視するところは全く違うようだ。
よくわかった。
これは単純に綺麗物好きとか自堕落だとか、そういう問題ではないように感じる。それぞれの主張にきちんとした根拠が感じられた。まあ、屁理屈とも言えなくもないのだが。でも本人なりの理屈にはなっている。
ちなみにだが、俺は物がないのも相まって比較的自室は綺麗に保っている方だと思う。時々母親が掃除してくれているお陰でもあるのだが、散らかすという経験が殆どない。
しかしそれは何か美学とか、こだわりがあるわけではなく、ただ子供の頃の使った物は元に戻しましょう、洗濯物はかごに入れましょう、といった決めごとをなんの疑問も持たずに守っているだけだ。
なんとなく、きちんと意志を持って部屋の環境を形作っている二人には負けた気分がした……。
そして佐伯の説得も虚しく、部屋は瞬く間に片づけられていった。しょうがない。あくまでもこの部屋の正式な主は和泉なのだ。
「あ! それだめそれだめ! 見ないでよ!」
ひときわ佐伯が騒いだのでなんだなんだと目を向けると、それは積み上げられた衣類の固まりを崩そうとしている和泉を制止する声だった。
「いやお前こういうの全部皺になるからちゃんと……あ」
服と服の間からポロポロと落ちてきたのはふわふわした布切れ。よく見ると下着だった。それもたくさん。犬が宝物を穴蔵にため込む様子が脳裏を過ぎった。
殆どがシンプルなスポブラとか、機能性重視らしいデザインのものだが、いくつか装飾のついた可愛いのも混じっている。こうして見ると普段使いと勝負下着というのがわかりやすい。っていうか見たことない可愛いのがたくさんあるんですけど。心がキュッとしたんですけど。
「も、もう! さいってー! ありえないんだけど! 変態なんだけど!」
「タンスにしまう意味がわかっただろ。全く」
「さ、触んないでよー!」
「おい、和泉お前! なんで平然としてられるんだ!? セクハラ野郎め!」
どさくさに紛れて俺も混じって和泉を責め立てたがどこ吹く風だ。
嘘だろ? 女兄弟いるからってこんなに違うもんなのか? パンツやブラジャーなんて見慣れてるのか?
嘘だと言ってくれ!
佐伯がかき集めようとすると、黒いパンツが取りこぼされた。スポーティーなやつじゃない、レースのやつだ。
「ちょっとそれ見せて!」
和泉への驚愕とたくさんの下着類を目の前に気持ちが高ぶって、思わずそう叫んで二人の間に割り込んでいた。
二人は呆気にとられた様子で俺に場所を譲る。
俺は真剣な表情で佐伯の手に収まっていた下着を漁り、床に落ちた物とセットであろう組み合わせを見つけて床に並べる。他のも順番にペアをみつけていく。神経衰弱のようなものだ。しかしその殆どはセットではなかったのか、相方が見つからない。特別可愛いデザインのものだけがブラとパンツきちんと揃っているようだった。
ついでにそれとなくサイズを確認する。
「B65……そんなに!?」
「え? う、うん、一応、そうみたい……?」
「そんなにって、お前の基準どうなってんだ。Bだぞ」
もちろん実物を見ての感想だ。
何を意味しているのかよくわからないが、65というのもなんかでかそうだ。マックスが百なら過半数だし。
しかし実際のブツは触るとこう……手が余るというか……余裕があるというか……仰向けになったら殆どどこかに消えるというか……。すごく丁寧に触らないと掴み損ねるような、そんな儚さみたいなものがあり、なるほどこれがAカップってやつなんだろうなと察して深くは聞かないようにしていたんだが、B、あったのか……。この調子でいくとCやDもそれほど実物の大きさに期待できそうにないな……。
っていうかあれでBならAはどんななんだ。ブラの意味はあるのか!? 河合さん!(推定A以下)
そして俺は僅かな洒落たデザインの物の中からもっとも目を引く物を目の前に並べる。
黒を基調としていて濃いピンクの差し色が入っているが、セクシーさというより可愛らしさの印象が強い。下手すると下品にもなりそうな色合いだが、女子小学生がちょっと大人ぶって選ぶような、そんな愛嬌がある。面積が小さい分生地や作りにこだわっているのだろうか。大体女性の下着というのは、一色でレースのような細かい刺繍みたいな模様が施されている物をよく見る。……もちろん見ると言ってもテレビとかの話なんだが。
しかし佐伯のはもっと水着のようなしっかりした生地とデザイン性を感じさせられた。だって、色や生地が薄い服だったらこんな派手派手なの丸見えじゃないか。それに人に見せるためのデザインというように思える。いい下着をつけると自分の気分が上がるとは聞くが、それにしては人に見られることに重点を置きすぎているように感じる。
もしかして、こんな下着をつけた姿が見たい、とかリクエストされたんだろうか。それで買ったり、プレゼントされたりしたんだろうか。
うっ! 胸が苦しくなってきた。俺はみたことないのに! なんなら始めてみたのは小学生みたいな木綿のパンツだ! 紺色のスポブラだ! 河合さんと買ったらしい。それはそれでいいと思うが! く、苦しい……。
「こ、これを……」
「えっ何? どうしたの?」
苦しげに絞り出す俺を佐伯は心配そうに見つめる。
「これを着けてるところを見たい……!」
二人に頭をはたかれた。
バカになったらどうするんだ。
「多分オレのこと心配して結構無理して帰ってきてるんだよ。おばさんは帰るの夜遅くなっちゃうことあるし、かおちゃんも部活忙しくてその間はオレが家で一人になることが結構あるから……」
なるほど。寂しくないようにこの家に招いたのに、放置になるようじゃ意味ないし。それに佐伯の状況を考えれば無理してでも帰宅しようという気持ちはわからなくはない。
「でもお姉ちゃんは大学もあるし、オレのこと気にしなくて良いのにな。ゲームとかしてればあっという間だし」
「ところでそのお姉ちゃんっていうのは一体……」
ずっと気になっていたことを指摘すると、佐伯は唇を尖らせた。出た。その名も照れ隠しのポーズだ。もう俺には通用しないぞ。
「友也、昔は姉ちゃんのことお姉ちゃんって呼んでたよな」
「そうだよ。大きくなってからは恥ずかしくて裕子さんって呼んでたけど、……いいでしょ! 別に!」
「お、怒らなくても……」
逆ギレ気味に佐伯はわめくとベッドの上にぽすんと座った。
まあ、男女として意識していたのが取っ払われたということなのだろうか……。
「つーかよぉ、お前、人の部屋使ってる自覚あるか? もうちょい掃除してくれよ……」
和泉は呆れて部屋を見回した。確かに、正直とっちらかった部屋だった。
物が片づけられていないというだけで、ゴミだとかはなさそうなので不衛生さはないが……。でも、まあ、綺麗では、絶対ない。
「え? あ。うう……ごめん……」
佐伯の認識としては汚い自覚がなかったのだろうか。
指摘されてようやく恥ずかしそうに、ベッドの上の本やクッションをまとめて移動させて座れるスペースを作って、ほら、ここ座れるよ、と言った。
そうじゃない。そうじゃないんだ。多分それでは和泉は納得しないと思うぞ。
かくして、佐伯の部屋の大掃除が急遽始まった。
これは一体どうしてこんな有様に? と逐一尋ねると、それはこういうときにこうするために~と弁解が入る。そして和泉は聞いておきながら無視して片付ける。これの繰り返しであった。佐伯はちょこちょこと抵抗しているが、正論で黙らされている。完全にお母さんと子供である。
その散らかり方はとにかく出しっぱなし、というタイプだった。
そもそも普段使わない物をしまって隠すということを美とする、そういう感覚がないのだろうか。
これはたしかに、ある程度は人の感覚によるだろう。完全にしまってしまえば取り出すときに手間だし、予め出しておけばすぐに取り出せるのは確かだ。まあ、その量が異常なんだが。これでなくし物をするならさっさと治せといえるんだが、それほど佐伯に粗忽者のイメージはないし。
しかしそう思えば意外と規則性があった。物が所狭しと並んではいるが、きちんと動線は確保されているのだ。無闇に積み重ねられてもいない。生活の邪魔にはなっていないのだろうと察しがつく散らかし方であった。あくまでも佐伯にとっては、だが。
最も和泉が発狂しそうになったのが本棚の並び順だ。巻数がどれもめちゃくちゃなのだ。一応シリーズものは固められていて感心したが、それは和泉が元々決めていた配置だそうだ。つまり漫画を読むときそのシリーズを丸ごと取り出して、読み終わったらそのまま戻したのだ。それなら巻数がめちゃくちゃになることはそうない気がする。読み終えた順に積み上げればいい話だからだ。
この法則性はどれだけ頭を捻っても導き出せそうになかったので観念して本人に聞くと……
「ああ、これはね、お気に入りで何回も読み返す巻があるでしょ? それは左から順番に並べるの。あとで探すの面倒じゃん?」
つまり勝手に自分に適したように工夫を凝らしていたのだ。和泉の本棚なのに。
「お前なあ! 順番通りに並べないと背表紙の絵が完成しないだろ!? 綺麗に並べてこそコレクションだろ!」
「え? 別にいいじゃん。それ一回見たことあるし。いくら棚が綺麗になっても中身読まきゃ意味ないじゃん。こっちのが楽だよ?」
「そういう問題じゃねえんだよ~! 作者がどんな思いでこの背表紙描いたかわかるか!?」
「多分締め切りのこと考えてたと思うよ」
二人が重視するところは全く違うようだ。
よくわかった。
これは単純に綺麗物好きとか自堕落だとか、そういう問題ではないように感じる。それぞれの主張にきちんとした根拠が感じられた。まあ、屁理屈とも言えなくもないのだが。でも本人なりの理屈にはなっている。
ちなみにだが、俺は物がないのも相まって比較的自室は綺麗に保っている方だと思う。時々母親が掃除してくれているお陰でもあるのだが、散らかすという経験が殆どない。
しかしそれは何か美学とか、こだわりがあるわけではなく、ただ子供の頃の使った物は元に戻しましょう、洗濯物はかごに入れましょう、といった決めごとをなんの疑問も持たずに守っているだけだ。
なんとなく、きちんと意志を持って部屋の環境を形作っている二人には負けた気分がした……。
そして佐伯の説得も虚しく、部屋は瞬く間に片づけられていった。しょうがない。あくまでもこの部屋の正式な主は和泉なのだ。
「あ! それだめそれだめ! 見ないでよ!」
ひときわ佐伯が騒いだのでなんだなんだと目を向けると、それは積み上げられた衣類の固まりを崩そうとしている和泉を制止する声だった。
「いやお前こういうの全部皺になるからちゃんと……あ」
服と服の間からポロポロと落ちてきたのはふわふわした布切れ。よく見ると下着だった。それもたくさん。犬が宝物を穴蔵にため込む様子が脳裏を過ぎった。
殆どがシンプルなスポブラとか、機能性重視らしいデザインのものだが、いくつか装飾のついた可愛いのも混じっている。こうして見ると普段使いと勝負下着というのがわかりやすい。っていうか見たことない可愛いのがたくさんあるんですけど。心がキュッとしたんですけど。
「も、もう! さいってー! ありえないんだけど! 変態なんだけど!」
「タンスにしまう意味がわかっただろ。全く」
「さ、触んないでよー!」
「おい、和泉お前! なんで平然としてられるんだ!? セクハラ野郎め!」
どさくさに紛れて俺も混じって和泉を責め立てたがどこ吹く風だ。
嘘だろ? 女兄弟いるからってこんなに違うもんなのか? パンツやブラジャーなんて見慣れてるのか?
嘘だと言ってくれ!
佐伯がかき集めようとすると、黒いパンツが取りこぼされた。スポーティーなやつじゃない、レースのやつだ。
「ちょっとそれ見せて!」
和泉への驚愕とたくさんの下着類を目の前に気持ちが高ぶって、思わずそう叫んで二人の間に割り込んでいた。
二人は呆気にとられた様子で俺に場所を譲る。
俺は真剣な表情で佐伯の手に収まっていた下着を漁り、床に落ちた物とセットであろう組み合わせを見つけて床に並べる。他のも順番にペアをみつけていく。神経衰弱のようなものだ。しかしその殆どはセットではなかったのか、相方が見つからない。特別可愛いデザインのものだけがブラとパンツきちんと揃っているようだった。
ついでにそれとなくサイズを確認する。
「B65……そんなに!?」
「え? う、うん、一応、そうみたい……?」
「そんなにって、お前の基準どうなってんだ。Bだぞ」
もちろん実物を見ての感想だ。
何を意味しているのかよくわからないが、65というのもなんかでかそうだ。マックスが百なら過半数だし。
しかし実際のブツは触るとこう……手が余るというか……余裕があるというか……仰向けになったら殆どどこかに消えるというか……。すごく丁寧に触らないと掴み損ねるような、そんな儚さみたいなものがあり、なるほどこれがAカップってやつなんだろうなと察して深くは聞かないようにしていたんだが、B、あったのか……。この調子でいくとCやDもそれほど実物の大きさに期待できそうにないな……。
っていうかあれでBならAはどんななんだ。ブラの意味はあるのか!? 河合さん!(推定A以下)
そして俺は僅かな洒落たデザインの物の中からもっとも目を引く物を目の前に並べる。
黒を基調としていて濃いピンクの差し色が入っているが、セクシーさというより可愛らしさの印象が強い。下手すると下品にもなりそうな色合いだが、女子小学生がちょっと大人ぶって選ぶような、そんな愛嬌がある。面積が小さい分生地や作りにこだわっているのだろうか。大体女性の下着というのは、一色でレースのような細かい刺繍みたいな模様が施されている物をよく見る。……もちろん見ると言ってもテレビとかの話なんだが。
しかし佐伯のはもっと水着のようなしっかりした生地とデザイン性を感じさせられた。だって、色や生地が薄い服だったらこんな派手派手なの丸見えじゃないか。それに人に見せるためのデザインというように思える。いい下着をつけると自分の気分が上がるとは聞くが、それにしては人に見られることに重点を置きすぎているように感じる。
もしかして、こんな下着をつけた姿が見たい、とかリクエストされたんだろうか。それで買ったり、プレゼントされたりしたんだろうか。
うっ! 胸が苦しくなってきた。俺はみたことないのに! なんなら始めてみたのは小学生みたいな木綿のパンツだ! 紺色のスポブラだ! 河合さんと買ったらしい。それはそれでいいと思うが! く、苦しい……。
「こ、これを……」
「えっ何? どうしたの?」
苦しげに絞り出す俺を佐伯は心配そうに見つめる。
「これを着けてるところを見たい……!」
二人に頭をはたかれた。
バカになったらどうするんだ。