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2章

 そうして、数日が過ぎたある日、佐伯が学校を休んだ。
 まずチェックしたのは天気だ。あいつは雨の日は休む。多少熱があっても、天気の良い日はそうそう休まない。
 しかし降水確率は今日一日0%が続くらしい。
 和泉に何か知ってるか尋ねてみる。

「あー、いや。何も聞いてないけど……」

 そう言ってすぐにメールを打ち始めた。
 今日和泉は実家から来たわけではないようだ。
 まあそれはそうか。だったらはじめに佐伯は今日休みだって教えてくれるだろうしな。

「腹痛だってよ」
「なんだ。冷やしたのかな」

 和泉は何故かじとっとした目で俺を見る。
 そして少し声を潜めた。

「わかんねえけどさ。あんま女子の腹痛の理由探んない方がいいと思うぜ。言いにくい時もあるだろうし」
「じょ、女子って……」

 そりゃあ見た目はそうだけどさ、そんなに女子扱いするのはやっぱり……と思いかけたところでふと和泉が言いにくそうにしている意図に気づいて一瞬言葉に詰まった。

「ええ? いや……それは考えすぎじゃない?」
「そんなこたないだろ。そりゃほんとに下してるだけかもしんねえけどさ。健康体だっつーなら普通あるだろ。リサちゃんも重い方だって言ってたし、体質的に友也もそうかもしんないじゃん」

 え、えええ……。
 なんて話をしてるんだ。いくら幼馴染だからって……そういう話題口にするものなのか……?
 和泉は女兄弟ばかりだし家族仲もかなり仲も良いみたいだから、デリカシーないくせに、そっち方面、意外と気が回るらしい。
 河合さんの体調不良にだってすぐ気がつくしなあ……。俺は全然考えもしなくて、かなり失礼なことを言ってしまってあとから和泉や佐伯に嗜められたことが何度かある。

「じゃ、じゃあ……どどど、どうする?」
「どーもこーもなくね? まあ、普通の女子ならおれらが声かけてもしゃあねえけど、友也は男だし、突っ込んで聞いてみるのもありかもな。帰り寄って良いか聞いてみる」

 和泉の行動は早かった。俺があれこれ考えているうちに次にやることを決める。

「寄っても良いってよ。案外ただの下痢かもな」

 そしてやっぱりデリカシーもなかった。

---

「すいませんねえ〜お構いもできず」

 佐伯は思ったより元気そうにおどけた喋り方をした。
 が、ベッドの上に壁に寄りかかって座り、毛布でぐるぐる巻き、髪もボサボサで寝起きなのがよくわかる。一見すると女の子のかなりだらしない日常的な光景に、見てはいけないものを見ているような気がしてくる。

「おれよりおれの部屋に馴染んでんな」
「もうここは第二のオレの部屋だからね! ゲームも持ってきたし」

 とはいうが、男っぽい無骨なデザインの家具に囲まれてるのは、彼氏の部屋に遊びにきた女子というようにしか見えないのだが、そんなからかい方はできそうになかった。
 俺だってちゃんと病人を労る気持ちは持っているのだ。

「河合さんはいないんだね」
「あ、やっぱ呼んだ方が良かったか? 帰るの遅くなると思って呼ばなかったんだよ」
「あー、だよね。今日学校長い日だったもんね。帰りの電車混むだろうし、呼ばなくて正解だよ」

 そういうと佐伯はゆったりした動作で毛布から出てくるとそれを羽織るように纏い直して、ベッドの淵に座る。

「うっ!」
「えっ!?」
「どうした!?」
「あっ、いや……ちょっと……どばっと……ううん大丈夫……」

 ゆっくりと、体をかばうように居住まいを正した。

「それで……体調はどう?」

 あまり良くはなさそうなのはよくわかるけど。

「お腹はね、痛み止めもらったから、ほとんど大丈夫くなったよ。でも寒くてさ……」
「それって……せ、せい……」
「あー……うん……」

 気まずそうに佐伯は視線を横に滑らせる。
 や、やっぱり……。
 これは……流石にショックだろうな……男が経験するわけない現象だ。
 関係ないのに俺もちょっとショックだもん。
 佐伯は気まずさを誤魔化すように言い訳のような言葉を並べ立て始めた。

「あのね、すっごく気持ち悪いんだよ! 声出るくらい痛かったし! 血が出るのわかるんだよ、あ! 血、見る!? 今トイレいって」
「いい! いいから! 寝とけ!」

 冗談ではなさそうだったので二人で慌てて止めた。

「お前、てっきり凹んでると思ったのに、元気じゃん」
「凹んでるよ〜、だってすごく体調悪いんだもん。でも服やパンツ洗ったり、色々おばさんに教えてもらったりしてバタバタしてて、ほっとしたらお腹痛くなって、でも寝てる途中でもトイレ行かなきゃいけないし、……もう疲れちゃった」

 言ってることは壮絶だが、本人はケロッとしている……ように見える。

「昨日の夜になったから、まだ一日目ってことなのかな。二日目が一番重いんだってさ。だからもしかしたら明日も休むかも。でも心配しなくて大丈夫だからね」

 おお……なんだか逞しく感じる。
 顔色はあまりよくないけど、まあ、この様子なら大丈夫なんだろう。
 和泉の家族がついててよかった。

「それ寝巻き? 可愛いじゃん」

 和泉がサラッと褒めた。こいつ、本当になんの躊躇いもなくそう言うこと言うよな。相手が佐伯でもお構いなしだ。
 佐伯は黄色のドット柄の入ったパジャマを着ていた。あからさまに可愛いデザインというわけではないけど、どうみても女の子用だ。佐伯は少し照れくさそうに肩を竦めた。

「これね、かおちゃんが貸してくれたんだ。あ、和泉の妹だよ。昨日までリサちゃんの体操着のお古着てたんだけど、汚しちゃったし、あったかいからいい感じ。ソックスももこもこだよ」

 和泉や佐伯の姉妹の名前がよく出る。
 ちなみに現在和泉の妹さんは部活中で、和泉のお母さんは夕方からお仕事に行ったそうだ。
 なんにせよ、思ったより元気そうでよかった。体の調子は良くないんだろうけど。

「なんか欲しいもんあるなら今だけはパシられてもいいぜ」
「え、いいのー? じゃあホットミルク」
「はいよ」
「おー! 言ってみるもんだねえ」

 和泉は素直に立ち上がり、俺にもなにか飲むか訊ねてのそのそと部屋を出ていった。
 あいつは優しいし、世話焼きだ。それが遺憾無く発揮されている。
 今まで佐伯は一人で自分のことはできたし、世話されるようなことはなかったから、新鮮なんだろうな。かなり嬉しそうである。
 しかし、二人きりになってしまった……。俺は和泉ほどうまく気遣える自信がない。

「……た、大変だな、女の人って」
「そーだねえ、こういうときはさすがにねー。スポーツ選手とかどうしてるんだろ。毎回こんなだったら練習も試合も全然できないよ」

 まあ、個人差があるとは聞いたことがあるけど……。

「……待てよ? そういえばお前って人類で初めて男でありながら生理を体験した人間なのか?」
「ええー! そうなのかな……? オレがなったんだから、今までながーい歴史で一人くらい他にも性別変わった人いそうじゃない?」
「だとしても言ったもん勝ちだろ」
「……そっか。じゃあ、オレが世界初だ!」
「おー」

 拳を振り上げる佐伯を称えて拍手する。
 ずっと思ってたことだが、画期的なことなんだよな。
 人の性別を自由に変えられるなら、金を払う人はいくらでもいるだろう。
 仕組みはわからないが、今のところ体に負担がなく、なんなら視力回復というおまけつきだ。
 人の性別を変えるという力の持ち主なんて、絶対どこかのタイミングで有名人になっていると思うのだが、ネットで軽く調べてみても全くそれらしいものは出てこない。
 犯人がいるとすれば、あまり目立ちたがりやなタイプではないみたいだ。

「ねえねえ桐谷、もしかしてオレのこと考えてくれてる?」

 気付くと佐伯がこちらの顔を伺っていた。小首を傾げて、まるでぶりっ子みたいに見えて、おまけに考えていたことを読み取られて、少したじろいだ。

「べ、別に?」
「ありがとね、多分オレが思ってるよりいっぱいいろんなこと考えてくれてるよね」

 別にって言ったのに!

「い、いいって。俺も気になるし。頭動かすのが趣味みたいなとこあるし」

 そうやって正面から言われるのは気まずいんだ。
 わかるだろうに、佐伯も和泉もついでに河合さんも、みんな恥ずかしいことを真正面からはっきり伝えてくるのだ。

「そ、それにしても、子供できるようになったんだから気をつけろよな。ちゃんと自分の身は自分で守らないと」

 あれ、そういえば、妊娠中に元に戻った場合、胎児はどうなるんだろう。あんまり妊娠についてきちんと勉強したことがないからわからないな。内臓の一部として扱われるんだろうか。
 ううーん、なんだかグロい。

「さ、最低〜」

 思考は言葉の割に元気のない佐伯の声で打ち切られた。
 口角をぐっと下げて、毛布をぐしゃぐしゃに抱きしめて、じっとりと湿り気の多い目でこちらを睨んでいた。

「あ、あれ。佐伯? 泣いてる?」
「泣いてないよ! 泣くわけないでしょ! 桐谷のデリカシーのなさに呆れてたの! 引いてたの!」
「俺!?」

 なんで!? 情緒不安定になってるのか?
 たしかに、ホルモンバランスが崩れるだとかそういうのは聞いたことあるけど……。

「なんだ? いじめか?」

 気まずいところで和泉が戻ってきた。こんなの俺が悪いみたいじゃないか。

「聞いてよ、桐谷が無神経なんだよ!」
「さ、さっきまで俺に感謝述べてたじゃん!」
「それはちゃんとありがとうって思ってるよ! いちーち子供ができるとか、そういうのなんで言うの!?」
「えっ……? だ、だってその通りじゃん!?」

 あんまりピンときてなさそうだから忠告してやったのだ!
 それなのに和泉までやれやれというような目を向けてきた。

「お前将来娘に嫌われそう」
「和泉まで!?」

 どうしよう。すごくグサリときた。

「流はカフェオレな。おれは大人だからコーヒーだけど」
「な、何故……いいけどさ……」

 和泉は人数分の飲み物とおかきの詰め合わせを持ってきていた。渋い。

「ああそうだ、おれも気になってたんだけど、いいか?」
「え? 何?」

 珍しく和泉が改まって佐伯に話しかけた。
 ベッドの上なのに気にすることなく煎餅を食べていた佐伯は首をかしげる。

「女になってから、男に対していいな〜と思ったり、女子に対してドキドキしなくなったり、そういう意識の変化ってあったりすんのか?」

 おーっと。これは佐伯怒るぞ~。

「うーん……特にないかなあ……。元々女友達にドキドキすることってなかったけどね。今んとこ中身も女っぽくなるような感覚はないと思うよ。ちょっとネガティブになってるなーとは思うけど、これは生理のせいらしいし」

 あれ? 普通だ……。
 なんでだよ。俺の話と一体何が違うんだ?

「そっか……。ホルモンとか関係ありそうだと思ったんだけどな。すぐには影響しないのかな……」
「やめてよ〜、なんかオレがオレじゃなくなっちゃいそうで怖いよ」
「だよなあ。いつかお前がおれにメロメロになったらどうしよ。こわ」
「うげっ、そうなったらちゃんと目を覚まさせてよね」

 俺にもそういう冗談っぽい反応をして欲しい……。
 あとで何がいけなかったのか和泉に聞いたら、俺のは本気っぽいからダメなんだそうだ。
 本気も何も、本当のことじゃん……。

「あーあ。焼き肉食いたくなってきた」

 和泉はやっぱりバカなのだ。

---

 そのあとは特に佐伯とは関係のない話で盛り上がっていた。佐伯の機嫌もすぐに治ったし。
 うん。今まで通りの感じだ。多分佐伯も腫れ物のように触られるより居心地はいいはず。

「でもさ、オレが今女の子と付き合うとするでしょ、そしたらオレ同性愛者になるの?」
「まあ、そうだろ」
「でもさあそれってどうなの? 相手も女の子を好きな女の子だったとしたら、見た目は女だけど中身は男のオレって、詐欺だと思うのかな?」
「うーん……? 実際の性別とかどうでもいいんじゃないの? 男でも女でも」
「そう? そうかなあ」
「お前性別にこだわりすぎじゃね?」
「こだわるよ〜、こだわらないってんなら一回性別変わってみてよ〜」

 そう言われると和泉は黙るしかない。
 性別どうこうはともかく、望んでもいないのに自分の慣れ親しんだ体が突然変わってしまうなんて誰だってごめんだろう。

「じゃあ佐伯は、好きな女の子がある日突然男になったら、気持ち変わるのか? 変わらないのか?」

 今度は佐伯が黙る番だった。
 自分で考えてみる。
 河合さんがある日突然男になったとして……。う、うーん……。
 あの小動物っぽい可愛らしさは、なくなっちゃうんだろうな。背とかも、意外と俺より高かったら凹む。
 性格はあのままだとして……。……可愛い弟分……って感じにはなるかな……。いや、男だったら結構生意気に見えるのかな。河合さんは全然生意気じゃないけどさ!
 ときめいたりとかは、正直、難しい気がする。いや、その時になってみないとわからないけど。どれだけ男でもあの美貌だったらやっぱりきゅんとくるかもしれないし。
 俺と同じように黙って想像を巡らせているのか、佐伯は絨毯の模様をじっと見下ろしていた。
 こういう話題は気まずいのか、和泉はテキパキとおかきの包装をかき集め、空になったコップと共に、片付けてくるわ。と部屋を出て行ってしまった。逃げた。

「……変わんない」

 ぽつりと佐伯は呟く。

「オレが男のままで、裕子さんが男になったら、それでも好きだよ」

 はっきり言った。
 本人に言えよ。このヘタレめ。

「……でも、オレ、今は他の人から見たら、男の人と付き合うのが普通なんだよね……」

 そういう言い方は、傷つく人が出てくるんじゃないかな。普通とか、そういうの。ま、俺しか聞いてないから良いか。
 それにこの状況で嗜める気にはならなかった。

「本人たちが良ければ、誰と付き合ってもいいと思うけど」
「オレがよくても、相手はどうかわかんないよ」
「そんなの、異性でも同性でもみんな同じだろ」

 佐伯は眉毛をハの字にした。情けなさそうな顔だった。
 みんな同じ、でもやっぱりハードルは違う。それを無視した発言だったが、佐伯は何も言わなかった。

 ふと、下の階が騒がしくなった。話し声が聞こえる。誰か帰ってきたんだろうか。
 ドタンバタンという物音で声の詳細はわからない。和泉が動くとうるさいんだ。動きが大きいし雑だから。
 どだどだとやかましい足音が近づき、ノックもなくドアが開いた。

「友也くん! 大丈夫!?」

 勢いよく扉を開けて入ってきたのは、柔らかい金髪が眩しい綺麗な女の人……裕子さんだった。
 後ろで追いついた和泉が難しい顔をしていた。

---

「お母さんから連絡もらって、急いで帰ってきたんだよ」
「姉ちゃん撮影はどうしたんだよ」
「終わってからだよ〜! 終わったら観光しようと思って長めに予定とってただけだもん」
「そ、それは、あの、オレのせいで、すみません……」
「なんで謝るの〜! あたしだけ何もできずにのほほんと観光地の写メ送ったりするのやだもん!」
「いやそりゃ気ぃ遣うだろ……よく飛行機取れたな」

 裕子さんはいつもに増してエネルギッシュに見えた。和泉にちょこちょことつっこみを入れられつつも裕子さんは佐伯から決して目を離さず、真剣な表情をしている。
 よかったじゃないか、好きな人にこんなに心配されて。
 そう思って佐伯を見たが、なんだかより一層しおしおと小さくなっているように見える。
 ……まあ、こいつが好きな人に対してだけ反応がおかしくなるのは今に始まったことじゃない。

「それで……治療とかって……どうなってるの?」

 おずおず、といった様子で裕子さんが俺たちに順繰りに目線を移しながら尋ねる。上目遣いで、メイクの力なのか、頬はいつも血色が良くて健康的だ。これを可愛くないとかいう男はいないだろう。
 生気を失っている青白い顔の佐伯とは対照的だった。
 俺たちがどう言ったものか、考えあぐねていると佐伯が毛布の裾を指でいじりながらゆっくりと答え始めた。

「えと……、病院だとなにもわからなくって……」
「原因不明ってこと?」
「うん……桐谷は、病気じゃなくて誰か犯人がいるんじゃないかって……」

 佐伯がチラリとこちらを見る。
 俺としては、ある程度その方が納得がいくのだが、佐伯はあまりわかっていないらしい。
 ただ俺の主張を信じている……信じるしかないという姿勢だろう。
 裕子さんもこちらの表情を伺っている。佐伯の短い説明に、色々と疑問があるはずだ。
 だがこの場で不用意に聞かれても、俺も困る。犯人が見つかるなんて保障は誰もできない。しかしはっきりと口にしてしまえば、佐伯はきっと頭ではわかってはいてもやはり落ち込むだろう。
 裕子さんは俺が言葉を選んでいるのを察したらしい。

「……大丈夫だよ、あたしたち、友也くんのためならなんだって頑張るから」

 裕子さんは何度か躊躇ったのち、佐伯の手を握ってそう言った。力強い声だった。
 佐伯の顔がみるみる赤く染まった。

「それにもしも元に戻れなくても、絶対そばでサポートするから。ね? だから大丈夫だよ」

 力強い言葉だった。赤く染まっていた佐伯の顔が元に戻っていき、見るからに肩を落としている。
 見ていてわかりやすいほど落ち込んでいた。
 好きな人に全面的に支えると言ってもらえたのに、俺はよかったな、佐伯、みたいなつもりで見守っていたのに、どうやら佐伯が欲しい言葉はそれではなかったらしい。

「ありがとうございます……」

 力なく佐伯は項垂れていた。

「だ、大丈夫! 大丈夫だよ! 一回女の子になれたんだもん、男の子になる方法だってあるよ! ね、アキちゃん!」
「お、おおう! そりゃあなあ! 戻れないっつーのは道理がなってねえよなあ!」

 二人は必死に励ましているが、少し見当違いな励ましな気もする。
 しかし、性別が変わった人間の気持ちを慮って、正しく励ませられる人なんていないだろう……。
 裕子さんたちの慌てた様子に、佐伯は力無く笑っていた。


 裕子さんは数日滞在する予定らしい。憧れの人と同じ屋根の下。昔の佐伯なら身悶えするような状況のはずだ。落ち込んでる状況じゃないぞ。
 女同士なんだから、一緒にお風呂入っちゃえばいいじゃ~ん、と冗談で言ったら無視された。

 しかしその日の夜、裕子さんから和泉姉妹二人と佐伯がお揃いのルームウェアを着た写真が送られてきた。困った顔をしてはいるが楽しそうでもある。
 なんだよ、ちゃっかり満喫してるじゃないか。
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