溺愛しゅかゆづ夫婦 6
美味しそうなロールケーキ。スプーンですくう小ぶりなひとくち、朱夏は弓弦に微笑みかける。「ほら、あーん」。
おいしいロールケーキ、今度は僕が朱夏に「あーん」してあげる番だ。スプーンでひとくち、少し大きめ。
貴女の幸せを願うだけでは事足りない。俺が貴女を幸せにします。この世界の、なによりも。
どこかから聴こえる祭囃子。貴方はひまわり色の瞳を輝かせ、僕の手を取り、「なにが食べたいですか」なんて見つめてくる。
秋風は冷たく突き刺さる。ふたりがぴたりと寄り添う、良い口実になる。
あ、……きれいな、蝶。ねえ朱夏、いま、蝶々が……。え? 貴方の龍の格好の方がきれい、って。ふふ、蝶にもやきもきするの。
貴方とぎゅっと手をつないで、街のあちらこちらを見て、目的はないけれど。幸せだ。
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