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溺愛しゅかゆづ夫婦 6

 今日のお弁当は何にしよう。
 考えるあいだも楽しいだなんて、ちょっと前まではありえないことだった。
 僕は本当に朱夏に変えられてしまったんだなあ、と思う。弓弦は、そして、幸せそうに微笑んだ。

 結婚前まで。朱夏と付き合う前まで。
 無縁だった『料理』というものも、すっかり手に馴染んでいる。
 ぶ厚い卵焼きにプチトマト、炒めた鶏肉とほかほかの白米。海苔でちいさく『すき』と書いて。

「……わふ。弓弦、おはようございます」
「おはよう朱夏、……ふふ、すごい寝癖」

 あくびまじりに起きてきた朱夏が、ゆらりゆらりと近づく。
 弓弦がお弁当箱の蓋を閉めたと同時。ぎゅう、と背中から抱きすくめられた。

「待って、すぐご飯だから」
「はい。貴女がいいです」
「っ……こら、寝ぼけるな。起きて」

 すりすり甘える朱夏を口ではたしなめつつ、弓弦の手は彼の髪を優しく撫でていた。
 寝癖をとき、そっとなでなでする。弓弦がいちばん、朱夏を甘やかし、ゆるしている。

「お弁当もできたよ」
「ありがとうございます。お昼がとっても楽しみです」
「うん」

 さあ、じゃあ、朝ごはんにしようか。
 ずっしり重いお弁当箱を、かわいらしいいちご柄の巾着袋にいれる。そのあいだも、朱夏は、ぎゅっぎゅっ。
 ひたすら弓弦を味わうように甘え、弓弦もくすくす笑いながら、とことん朱夏を甘やかすのだった。


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