溺愛しゅかゆづ夫婦 6
雨が嫌いだった。
僕にとって、良いことがないから。頭は痛くなるし、妙な憂鬱に取りつかれてしまうし。
でも、今はそうでもない。相変わらず頭痛はする。憂鬱にだってなる。けれど、そんなのは些細なこと。
「弓弦、大丈夫ですか? 寒くありませんか」
「うん。ありがとう、おかげで大丈夫」
今日も優しい僕だけの旦那さま。
朱夏に甘やかされるぶんだけ甘えて、彼の作ってくれたはちみつ入りホットミルクと、身を寄せあう幸福にまどろむ。
遠くの雨音を聴きながら。
雨が街中を洗い流していく。朱夏は弓弦からおかえりなさいのキスをされる。
曇り空はどんよりと重たい。弓弦は朱夏と手をつなぎ、指を絡めるのはどちらともなく。
オルゴールは奏で続ける。朱夏と弓弦はひそひそ耳もとで話し合い、内緒話に笑いあう。
朱夏は、愛妻弁当のなかのプチトマトを眺めた。
しばしじっと見つめ、ふいに微笑み、それを指でつまみ上げる。
プチトマトを食べる、それだけの動作が、つくりもののように美しい。
それが、水無月朱夏という龍神だった。
彼は想う。最愛の花嫁のことを。
彼女の真っ赤な瞳を呑み込んでしまえたら。
甘くせつない空想を。
色とりどり目を惹く駄菓子たち。これが貴方みたい、これは貴女のよう、ふたりはそればかりで幸せだ。
朱夏は、職場や人間に対してとても冷たく、しかし愛妻の弓弦のこととなると、ついついふわふわ惚気けてしまう。
僕にとって、良いことがないから。頭は痛くなるし、妙な憂鬱に取りつかれてしまうし。
でも、今はそうでもない。相変わらず頭痛はする。憂鬱にだってなる。けれど、そんなのは些細なこと。
「弓弦、大丈夫ですか? 寒くありませんか」
「うん。ありがとう、おかげで大丈夫」
今日も優しい僕だけの旦那さま。
朱夏に甘やかされるぶんだけ甘えて、彼の作ってくれたはちみつ入りホットミルクと、身を寄せあう幸福にまどろむ。
遠くの雨音を聴きながら。
雨が街中を洗い流していく。朱夏は弓弦からおかえりなさいのキスをされる。
曇り空はどんよりと重たい。弓弦は朱夏と手をつなぎ、指を絡めるのはどちらともなく。
オルゴールは奏で続ける。朱夏と弓弦はひそひそ耳もとで話し合い、内緒話に笑いあう。
朱夏は、愛妻弁当のなかのプチトマトを眺めた。
しばしじっと見つめ、ふいに微笑み、それを指でつまみ上げる。
プチトマトを食べる、それだけの動作が、つくりもののように美しい。
それが、水無月朱夏という龍神だった。
彼は想う。最愛の花嫁のことを。
彼女の真っ赤な瞳を呑み込んでしまえたら。
甘くせつない空想を。
色とりどり目を惹く駄菓子たち。これが貴方みたい、これは貴女のよう、ふたりはそればかりで幸せだ。
朱夏は、職場や人間に対してとても冷たく、しかし愛妻の弓弦のこととなると、ついついふわふわ惚気けてしまう。
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