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溺愛しゅかゆづ夫婦 6

 月末。そっとため息をつく弓弦は、こう思っているのだろう。『今月も丁寧に暮らせなかったな』。
 弓弦と一緒に暮らす朱夏が聞けば、即座に、そんなことはありませんよと否定するだろう。実際、彼女は丁寧だ。一日一日を大切にしている。弓弦は生真面目すぎるゆえに、自分への評価がとことん厳しい。

 朱夏は、そんな弓弦にすぐ気づく。気難しい顔でスマホの日時を見つめる弓弦の肩を優しく叩き、朱夏は提案する。

「お饅頭でも食べましょうか。ほら、昨日買った」
「あ……、お月見で食べようと思ったやつ?」
「そうです」

 それは結局、食べずじまいだった。お月見はしたが、饅頭より月よりあなた、となってしまったためだ。
 朱夏は立ち上がり、そっと弓弦に手を差し伸べる。同じく立ち上がろうとした弓弦を、とても優しく誘導する。

「お茶も用意しましょう。俺がいれてさしあげます。ちょっと待っていてくださいね」
「うん。ありがとう、朱夏」
「どういたしまして。とびきり美味しいお茶、作りますからね」

 楽しみ。そう、ふわりと笑う弓弦が愛しい。朱夏は彼女の髪を撫で、その美しいベージュにキスをする。
 ――大丈夫。貴女はいつも頑張ってくれています。俺は貴女のおかげで幸せです。今日も、明日も。これからも。
 弓弦にとことん感謝と愛情を伝える、ふたりきりの甘い甘いお茶会にしようと、朱夏は思った。気負いがちな弓弦に、リラックスしてほしい。安心してほしい。

「大好きです。弓弦」
「……ん」

 照れくさそうに、嬉しそうにはにかむ弓弦を、どんな憂鬱、どんなものからも護りたい。朱夏は、強く、そう思うのだ。


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