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溺愛しゅかゆづ夫婦 6

 漠然とした不安感に押し潰されそうな夜、貴方が許すまますがりついて、ねえなにも考えなくてもいい?
 ねえ、朱夏、

「大丈夫。弓弦、大丈夫ですよ」

 貴方は僕を甘やかしてくれる。だいじょうぶと、子守唄みたいに。抱きしめ、背中を撫でてくれて、ゆりかごみたいに。
 苦しい。こわい。この幸せが、幸せな毎日が、あした突然こわれてしまったらどうしよう。
 ねえ。

「弓弦。……せっかくですし、たくさん泣いてしまいましょう。ほら、堪えないで」

 だいじょうぶ、俺が一緒ですから。俺がいますからね、って。
 貴方の言葉や体温、やさしいまなざし、すべてがひとつひとつ、僕のなかに沁みわたって溶けていって、
 何度も何度もにじむ視界を、そのたび貴方が拭ってくれて。
 怖い。ごめんなさい、僕はこんなに弱くて、情けない。
 どうか、見捨てないで。

「愛しています」

 貴方は微笑む。
 濡れた頬に口づけをくれる。何度も。




 どうか声を殺さず泣いて。俺は貴女のそういう居場所でありたい。



 日々が幸せであればあるほど、ふいに、あした失くしてしまいそうな恐怖に駆られる。



 失う、こわれる、それらの恐怖が僕の影を踏んでついてくる。



 俺の腕から指先、言葉から眼差し、すべてが貴女を包み護るためにある。


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