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溺愛しゅかゆづ夫婦 6

 弓弦との『ごく普通の生活』のため、ひとのすがたで人間社会に紛れる朱夏は、永らく龍神として世界を知らなかったわりに、なんでも器用にこなした。
 薬剤師として、客に人気が高い。やわらかな愛想笑い、あるいは営業スマイルというものが、美しい顔立ちとすらりとした高身長もあって、たいへんウケが良いのだ。

 一方で、職場の人間にはうっすらと冷たく、必要最低限でしか関わりをもたない。不要だと判断しているのか、客相手と違い、にこりとはしない。
 そんな朱夏だったが、彼が唯一、微笑みを惜しまない事柄がある。それのときばかりは、裏表のはっきりとした朱夏も、思わず唇がゆるむのだ。

「俺のお嫁さんですか。それはもう、とっても可愛らしくて、素晴らしいひとですよ。どんなところがって? はあ? 当然、全部ですけど」

 てきぱきと仕事をこなし、ほぼ毎日必ず定時上がりで帰る。客だろうが職場だろうが、さまざまな人間を、無意識に惹きよせてしまう水無月朱夏は、
 その右に出れる者などいないほどの愛妻家で、弓弦だけを溺愛し、彼女のこととなるとついつい、饒舌で上機嫌になってしまう。


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