このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

溺愛しゅかゆづ夫婦 5

 悪夢を
 どくんどくんと厭に脈打つ心臓が
 そうやって咀嚼、しているようで

 指さきまで音をたて
 じくじく痺れ、震えても
 息がつまって、くるしくても

 よくみる夢だよとわらってみせるから
 その僕がどんなにぶざまでも
 ねえ、朱夏。僕の傍に

「――大丈夫ですよ、弓弦」

 優しくて心強い、まっすぐな貴方の声、
 頬をつつんでくれる手のひら。
 至近距離。枯れることをしらないひまわり色の瞳。

 ……だいじょうぶ。
 そうやって微笑む貴方は眩しい。
 僕の中のわるい夢を、すべて追い払ってくれるみたいに。



 貴女を震え上がらせる悪夢すら妬ましい。
 ですから大丈夫、そんなもの、焼いて焦がして踏み砕きましょう。


26/31ページ