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溺愛しゅかゆづ夫婦 5

 気まぐれを手に取り針を通す、白地の布切れの中をさまよう黄色、赤色、糸。

 ひとつ、ひとつ、縫うたびに、貴方を想えばきっと、素直に言えない『大好き』も。

 いつしか無心で針を通した、ちくりと現実に戻され、指先に滲むものに興醒めして。

 ああいけない、布糸をよごしてしまったら。はっとあわてる僕の手を、貴方が優しく掴む。

 弓弦。僕の名を呼ぶ声も優しい。彼は布も糸も追い払って、僕の指先をあまく食んだ。

 お腹をこわしてしまうよ、朱夏。僕の心配に彼は微笑み、それどころか元気になると言う。

 なるほど、彼は龍神。頷き、はたと気づく。針が壊れてしまっている、これでは続きができないよ。


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