このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

溺愛しゅかゆづ夫婦 5

 夜遅く、弓弦と一緒にベッドでごろごろしながら、ふいに俺たちの初デートの話になった。

「あの時の貴女は警戒心の強い野良猫みたいでしたねえ」
「猫に失礼なんじゃない」

 手をつなぐどころか、指先ひとつ触れられなかった。その頃の弓弦は、とにかく笑わないひとだった。

「ふふ、朱夏、いたいよ」
「あ。すみません」

 あのときの弓弦も愛おしかった。俺はとうに弓弦に惚れ込んでいた。
 でも、今。その弓弦と『そんなこともあった』と笑い合い、こうして手を重ね合わせられることの、とろけるような幸せは、

「弓弦、大好きです」
「うん。僕もすき」

 そんな思い出も昨日のことのように色鮮やかだから、よりいっそうまばゆく輝いているのだろう。


10/31ページ