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溺愛しゅかゆづ夫婦 5

 いつものように起きたら、隣にいるはずの朱夏がいなくて、ベッドがからっぽでびっくりした。
 急ぎ足でキッチンへ向かう。そこにたどり着く前から漂う良い匂い、擦れあうような物音。

「ちょうど起こしに行こうと思っていました。おはようございます、弓弦」
「朱夏……おはよう」

 テーブルに並べられている朝ごはんたち。ベーコンエッグ、白い丸パン。
 いちご柄のエプロンを脱いだ朱夏に抱きしめられ、僕は彼をぎゅうっと抱きしめ返す。ああよかった、と吐息した。僕が起きたとき、彼はもうベッドにいなかったから。

「驚かせてしまいました? すみません。たまたまちょっと早く起きたので」
「……起こしてくれて良かったのに」
「たまには俺も貴女に朝ごはん作って差し上げたいなと思ったんです。貴女はいつも、俺のために頑張ってくれていますから」

 すみません弓弦、なんて。貴方が謝る必要は、これっぽっちもない。
 朱夏がちゃんとここにいてくれて、安心できた。だから僕は、朱夏をまっすぐ見上げて、「ありがとう」と。伝えたいまま言葉を発する、同時に自然と頬がゆるむ。

「ありがとう。嬉しいよ」
「はい、よかったです。冷めないうちにいただきましょう。俺の愛情たっぷりで、とっても美味しいですよ」
「ふふ、うん」

 すごい自信だな。でも、その通りなんだろう。
 僕は朱夏と手をつなぎ、テーブルへ。すぐそこなのに、朱夏は過保護なくらい僕を大切にしてくれて、テーブルまでを導いてくれるし、椅子を引いて座らせてまでくれる。
 くすぐったい。だけど、彼のしてくれるひとつひとつが嬉しい。

 朱夏が僕のために作ってくれた朝ごはんだからか、それらはとてもきらきらと、まぶしく輝いているように見えた。
 ぐう、とお腹が鳴る。

「いただきます」
「どうぞ、召し上がれ」

 今日もさっそく貴方に愛されてばかりだ。
 まだ一日は始まったばかりで、僕だって、貴方が大好きなんだよと――負けるつもりはないけれど。


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