このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

溺愛しゅかゆづ夫婦 5

 喘息を抑えるかわりの、ちいさな手のふるえを
 脱力感のひどい僕の両腕を
 ねえ朱夏、どうか、離さないでいて。

 ◆

 喘息のための薬を使い、ベッドに横たわる弓弦の
 淡白でうす細い手が、かたりかたりと震えている。
 弱々しい「離さないで」に、心臓が潰されそうだ。
 もちろん、離すわけないでしょう。いっときも。
 ねえ弓弦。もっと俺にできることはありませんか。
 水は飲めますか。……ああ、水、
 どうやって飲ませて差し上げたらいいでしょうか。
 いえ、わかる、はずなんです。
 ただ、頭がぐるぐるして、

「しゅか、……きす」

 して。と――
 望まれて、はっと我に返る。
 冷水を浴びたみたいに、思考が冴えわたる。
 ああ俺。貴女が心配すぎて。でも、そうですよね。
 水をくちに。貴女に、そうっとくちづけて。
 こくん、とうごく細い首に、ひとまずほっとする。
 どうか、どうかはやく、具合良くなってください。
 祈り、願い、つないだ手に力を込める。
 俺はずっと貴女の傍から離れませんから。


15/31ページ