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溺愛しゅかゆづ夫婦 5

「絶対、俺の方が格好いいと思うんです」

 朱夏は唐突に言った。たぶん、今まさにテレビで映されているバイク特集の、真っ赤なバイクに向かってなのだろう。
 赤色、古めかしいスマートなバイク。テレビのなかの人たちは格好いいと褒めるけど、僕にとってはどうでもいい。
 でも、朱夏は案外、バイクとか好きなのかな?
 意外に思って見上げる、僕のすぐ隣の朱夏。彼の横顔。朱夏もこちらを見た。

「弓弦、俺の龍のかたちのほうが、あれよりよっぽど格好いいです。真っ赤だし、長いし、陸だって空だって水中だっていけますよ」
「?? うん」

 もちろん、そうだな。貴方の方が格好いいよ。
 当然そうだと思うから、そう言って頷いただけなのに、朱夏は妙に勝ち誇った顔で、「ふふんそうでしょう」と満足げだ。そして、僕の肩にかけた腕に力を込め、僕をぎゅむっと抱きしめる。
 彼がなにを伝えたかったのか、なんの主張だったのか、さっぱりわからない。けれど、朱夏は嬉しそうにしているから、まあいっか。

 テレビのなかの話題が移ろう。
 僕は朱夏のきれいな髪を撫でる。


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