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溺愛しゅかゆづ夫婦 4

 弓弦は、すてられた子猫よりも警戒心が強く、
 それはそれはもう、振り向かせるのには苦労しました。
 ひろった子猫をなつかせるように辛抱強く、丁寧で、恐がらせない立ち回り。
 俺は龍の神で、そういうことをなにも知らずに、はじめは弓弦を傷つけてばかりでしたねえ。

「朱夏、なに笑っているの」
「いいえ。今日も貴女が可愛いなって」

 あのぴりぴりした子猫がいまや、俺の愛しい花嫁。
 俺の膝の上を特等席にして、
 あまえるみたいに身をあずけてもくれる。
 髪を撫でてもびくりとせず、むしろ心地よさそうに頭をかたむけてくれるまであり、
 むむっと俺を見上げる赤い瞳は、俺を映して純真に煌めいている。

「……また、とつぜん、そうやって」

 俺の言葉を素直に受けとめ、真っ赤な顔。
 それはふいっとそっぽを向いてしまうけれど、拒絶ではない。
 ああ。本当に可愛いな。
 俺は、もしも弓弦に好かれることがなかったとしても、このひとを愛し続けたでしょう。
 けれど――

「……貴方だって。今日も格好いいよ」
「っ、ふは、ありがとうございます。弓弦」
「ふん……」

 貴女を愛し、貴女に愛されている。
 これほどの幸せを、力強く抱きしめることができるんです。
 今。


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